日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 「心臓」特別号「僧帽弁狭窄と逆流」 > 心エコーによる僧帽弁逆流の重症度評価と問題点
小林 淳・竹石 恭知(福島県立医科大学 循環器内科)
Atsushi Kobayashi, Yasuchika Takeishi [Department of Cardiovascular Medicine, Fukushima Medical University]
2014年に米国心臓病協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)による新たな弁膜症のガイドラインが改訂された1)。新ガイドラインは、慢性の僧帽弁逆流(MR;mitral regurgitation)が一次性(器質性)と二次性(機能性)に分類されており、重症度の評価が異なる。さらに重症度と進行度によって4段階のステージ(ステージA~D)に分類され、治療方針を決定するように提唱されている。このガイドランでの重症度評価には心エコー図により測定する指標が使用されており、僧帽弁逆流における形態学的評価や血行動態的評価のみならず、重症度を評価し、治療方針を決定するために心エコー図は必要不可欠なものである。しかし、重症度評価は、その定性・定量評価法の特性や各疾患の病態特性をよく理解しなければ、過小評価、過大評価となり治療方針に影響を及ぼすこととなる。本稿では、心エコー図によるMRの評価について、重症度評価を中心にポイントと問題点について述べる。
ジェットのそばに壁面が存在する場合、ジェットが壁面に引き寄せられる現象。図は僧帽弁後尖P1逸脱による重度の僧帽弁逆流である。中隔側に偏位する逆流ジェットが左房中隔の壁面に引き寄せられている。偏心性の場合はジェットの面積が見かけ上小さくなってしまい過小評価につながる恐れがある。
術中経食道心エコー図所見。術後ポンプ離脱時にドブタミンを使用しSAMによる僧帽弁逆流が認められる。ドブタミンの投与を中止してβ遮断薬投与、補液負荷にてSAMが改善し、僧帽弁逆流が消失した。