□足の指の色が青紫になる原因としてまず考えるべきことはチアノーゼです。チアノーゼとは動脈血液中の還元ヘモグロビンが5g/dL以上となり口唇や爪床等毛細血管が多く外部から透見されやすい部位が青紫色になる現象です。程度が強ければ一般の皮膚も変色します。

□中枢の動脈血の酸素飽和度が低下するため生じるチアノーゼを中枢性チアノーゼ、末梢循環に障害があり局所の血流がうっ滞することにより生じるものを末梢性チアノーゼといいます。
足の指が青紫になっている時は、（1）中枢性チアノーゼ、（2）末梢性チアノーゼ、（3）組織障害に伴う変色、（4）その他血腫などが考えられます。

図　チアノーゼの分類

□中枢性チアノーゼには心性チアノーゼと肺性チアノーゼ、および血液原性チアノーゼがあります。還元ヘモグロビンが5g/dL以上となると生じるので、通常は酸素飽和度が70％以下で認められますが、多血症があればヘモグロビンが多いため酸素飽和度の低下が軽度でもチアノーゼを生じますが、貧血があればチアノーゼが生じにくいことになります。

□心性チアノーゼでは右心系の静脈血が左心系に流入することで生じます。小児における右左シャントを伴う先天性心疾患でチアノーゼを認めますが、成人においては心房中隔欠損や心室中隔欠損などで右心負荷が増加し、アイゼンメンジャー症候群が生じた場合に認められます。また肺動静脈瘻も肺動脈が肺静脈に短絡するためチアノーゼをきたします。短絡がなくても心不全などによる酸素化障害があればチアノーゼを認めます。

□肺性チアノーゼは換気、拡散、肺循環障害に伴い酸素分圧が低下することによって生じます。そのためすべての重症肺疾患、原発性肺高血圧症など、様々な肺疾患で生じます。
さらにメトヘモグロビン血症のような血色素の異常によるチアノーゼを血液原性チアノーゼといい、メトヘモグロビンが15％以上でチアノーゼを生じます。

□末梢性チアノーゼは、中枢の動脈血の酸素飽和度が正常なのにも関わらず、末梢循環不全に伴い組織における酸素の過抽出が生じ毛細血管内の還元ヘモグロビンが増加するために生じます。心拍出量の低下、下肢への動脈の狭窄や閉塞、末梢血管収縮、静脈系の閉塞などによって生じます。

□心拍出量の低下を来たす心疾患（心筋梗塞、心筋症、高度弁膜症など）において末梢の潅流が不十分になった場合やショック状態では、末梢への血液潅流が低下するためチアノーゼを生じます。

□下肢の動脈の問題としては、閉塞性動脈硬化症（ASO）や閉塞性血栓性血管炎（TAO：Buerger病）があげられます。

□また、末梢血管の問題としてレイノー現象や肢端チアノーゼ症があります。レイノー現象は寒冷刺激などのストレスにより血管収縮が惹起され指趾末端が蒼白となりその後一過性に青紫色となる現象で、膠原病や薬剤などの背景因子の検索が必要となります。肢端チアノーゼは恒常的にみられ寒冷で悪化するチアノーゼです。

□さらに下大静脈などの閉塞に伴い静脈潅流が阻害されると下肢の浮腫とともに変色が認められます。

□足の指が青紫になるその他の原因として、ASOや糖尿病性血管障害などの血管病変に伴う壊疽やblue toe syndromeなどの微小塞栓症による組織障害でも変色をきたします。また、血腫に伴う変色も鑑別の対象となります。

□心不全患者で足の指が青紫になったら、低酸素血症、拍出量低下、塞栓などの血管系のトラブルなどを想定し、原因検索を行う必要があります。