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検査項目 | 基準値と注意点 | おもな疾患・病態との関連 |
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グルコース(ブドウ糖) | 73-109mg/dL (空腹時,静脈血漿).全血で測定すると血漿の測定値より低くなる | 【高値】糖尿病(日本糖尿病学会の診断基準では空腹時126mg/dL以上,随時血糖200mg/dL以上が糖尿病型),その他の耐糖能障害 【低値】イソスリノーマ,糖尿病治療薬の使用,反応性低血糖 |
トリグリセリド(中性脂肪)(TG) | (空腹時) 男性:40-235mg/dL 女性:30-117mg/dL 日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準は150mg/dL以上 食後高値を示す |
【高値】家族性高リポ蛋白血症,肥満,甲状腺機能低下症,Cushing症候群,糖尿病,妊娠 【低値】β-リポ蛋白欠損症,甲状腺機能亢進症,副腎不全,肝硬変 |
総コレステロール(TC) | 142-248mg/dL 20歳以降,加齢に伴い徐々に増加.特に女性は更年期以降急速に増加.患者カテゴリー別に管理目標値がある |
【高値】家族性高コレステロール血症,糖尿病,妊娠,Cushing症候群,ステロイド長期投与,甲状腺機能低下症,ネフローゼ症候群,閉塞性黄疸 【低値】β-リポ蛋白欠損症,甲状腺機能亢進症,Addison病,重症肝障害,吸収不良症候群 |
HdL-コレステロール(HdL-C) | 男性:38-90mg/dL 女性:48-103mg/dL 日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準は40mg/dL未満 |
【高値】コレステロールエステル転送蛋白欠損症,肝性リパーゼ欠損症,アルコール摂取,原発性胆汁性肝硬変,薬剤 【低値】Tangier病,LCAT欠損症,糖尿病,慢性腎不全,肥満,喫煙 |
LdL-コレステロール(LdL-C) | (空腹時) 65-163mg/dL 日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準は140mg/dL以上 |
【高値】家族性高コレステロール血症,特発性高コレステロール血症,糖尿病,甲状腺機能低下症,先端巨大症,下垂体機能低下症,閉塞性黄疸 【低値】低β-リポ蛋白血症,甲状腺機能亢進症,栄養障害 ,重症肝疾患 |
尿酸(UA) | 男性:3.7-7.8mg/dL 女性:2.6-5.5mg/dL 絶食、脱水、強い運動で高値 |
【高値】痛風 ,無症候性高尿酸血症,腎不全,造血器腫瘍 【低値】尿酸生合成の低下(アロプリノール服用,各種酸素欠損症),尿酸排泄亢進 ,尿細管性アシドーシス |
クレアチニン | 男性:0.65-1.07mg/dL 女性:0.46-0.79mg/dL 筋肉量に比例する |
【高値】腎不全,尿路閉塞,ショック,心不全,先端巨大症 【低値】筋ジストロフィー,尿崩症,妊娠 |
ナトリウム(Na) | 138-145mmol/l. 採血後の全血放置により,血清濃度は低下する |
【高値】脱水,尿崩症 【低値】嘔吐・下痢による体外へのNa喪失,慢性腎不全,尿毒症,利尿薬投与,Addison病,SIADH,心不全 |
カリウム(K) | 3.6-4.8mmol/L 偽性高カリウム血症(白血球増加症,血小板増加症)を除外する.採血後の全血放置により,血清濃度は上昇する |
【高値】腎不全,透析患者,糖尿病,慢性腎不全,薬剤(スピロノラクトンほか) 【低値】K摂取不足,嘔吐・下痢によるKの体外喪失,薬剤(利尿薬ほか),原発性アルドステロン症 |
塩素(Cl) | 101-108mmol/L 採血時のうっ血により,血清濃度は低下する.採血後の全血放置により,血清濃度は上昇する |
【高値】Cl大量投与あるいは摂取,脱水症,Cl排泄の低下(尿細管アシドーシス,腎盂腎炎) 【低値】Cl摂取不足,水分過剰投与,嘔吐,胃液吸引,原発性アルドステロン症,呼吸性アシドーシスの代償 |
カルシウム(Ca) | 8.8-10.1mg/dL 補正血清Ca値=Ca実測値+(4-血清アルブミン) |
【高値】原発性副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、ビタミンD過剰症、サルコイドーシス、薬剤 【低値】副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、慢性腎不全、膵炎 |
鉄(Fe) | 男性:64-187μg/dL 女性:40-162μg/dL 朝高く,夜低い.発育期や高齢で低値.溶血で上昇 |
【高値】再生不良性貧血,鉄芽球性貧血,ヘモクロマトーシス,急性肝炎 【低値】鉄欠乏症貧血,真性赤血球増加症,慢性疾患に伴う貧血 |
AST(GOT) | 13-30U/L 採血以降の溶血で偽高値.激しい運動で上昇 |
【高値】肝疾患(急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変,アルコール性肝炎,脂肪肝など),筋疾患,心筋梗塞,溶血性疾患 |
ALT(GPT) | 男性:10-42U/L 女性:7-23U/L |
【高値】肝疾患(急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変,アルコール性肝炎,脂肪肝など) |
AST/ALT比(GOT/GPT比) | 0.87を基準として判断.以前のKarmen単位では1が基準. | 急性肝炎:AST>ALT→AST<ALT 慢性肝炎:AST<ALT 肝硬変,肝癌,脂肪肝,心筋梗塞,閉塞性黄疸,アルコール性肝障害:AST>ALT |
γ-GTP(γ-GT) | 男性:13-64U/L 女性:9-32U/L |
胆道系酵素 【高値】肝内胆汁うっ滞,急性肝炎,慢性肝炎,肝硬変, アルコール性肝障害,薬物性肝障害 |
乳酸化脱水素酵素(LDH,LD) | 124-222U/L 溶血により高値.運動,筋肉注射により上昇することがある. |
【高値】急性肝炎,急性心筋梗塞,白血病,悪性リンパ腫,悪性腫瘍,筋ジストロフィー,皮膚筋炎,心不全,慢性肝炎,肝硬変など |
LDHアイソザイム LDH1 LDH2 LDH3 LDH4 LDH5 |
LDH1:20-35% LDH2:30-40% LDH3:20-30% LDH4:5-15% LDH5:2-15% |
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アルカリフォスファターゼ(ALP) | 106-322U/L 血液型B型・O型の分泌型では食後に上昇する.成長期,妊娠後期に上昇する. |
胆道系酵素 【高値】肝胆道系疾患,骨疾患,甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍など |
前立腺ACP(PAP) | 3ng/ml以下 前立腺の機能的刺激で上昇 |
【陽性または高値】前立腺癌,前立腺肥大症 |
直接ビリルビン | 0-0.4mg/dL 男性のほうが高値を示す |
【高値】肝胆道系疾患(肝炎,肝硬変,閉塞性黄疸など),体質性黄疸(Dubin-Johnson症候群,Rotor症候群) |
間接ビリルビン | 0-0.8mg/dL 絶食,感染などで上昇 |
【高値】溶血性疾患,体質性黄疸(Gilbert症候群,Crigler-Najjar症候群),新生児黄疸 |
腎血流量(RBF) | 男性:1,044±118mL/分 女性:890±195mL/分 |
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濾過率(FF) | 0.2-0.22 | |
甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 0.38-4.31mU/mL キットにより基準値が異なる |
【高値】原発性甲状腺機能低下症 【低値】甲状腺機能亢進症(Basedow病) |
遊離トリヨードサイロニン(FT3) | 2.10-3.80pg/mL | 【高値】甲状腺機能亢進症,亜急性甲状腺炎,T3甲状腺中毒症,T3製剤内服 【低値】甲状腺機能低下症 |
遊離サイロキシン(FT4) | 0.82-1.63ng/dL | 【高値】甲状腺機能亢進症,亜急性甲状腺炎,TSH産生腫瘍,甲状腺ホルモン大量服用 【低値】甲状腺機能低下症 |
インスリン(IRI) 空腹時 |
5-10μU/mL | 【高値】インスリノーマ,肥満,インスリン治療中,インスリン自己免疫症候群,腎不全 【低値】糖尿病,膵炎,膵摘出後 |
ヘモグロビンA1C(HbA1C) | 4.9-6.0%(NGSP値) | 【高値】糖尿病(日本糖尿病学会の診断基準では6.5%以上が糖尿病型),腎不全,アルコール多飲 【低値】赤血球寿命の短縮,肝硬変 |
グリコアルブミン | 11-16% | 【高値】糖尿病 【低値】アルブミン代謝亢進状態 |
赤血球数(RBC) | 男性:435-555×104/μL 女性:386-492×104/μL |
【高値】(真性)赤血球増加症 【低値】貧血 |
ヘモグロビン量(Hb) | 男性:13.7-16.8g/dL 女性:11.6-14.8g/dL |
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ヘマトクリット値(Ht) | 男性:40.7-50.1% 女性:35.1-44.4% |
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白血球数(WBC) | 3,300-8,600/μL | 【高度高値】(50,000/μL以上)白血病,骨髄増殖性腫瘍,重篤な感染症,悪性腫瘍 【軽度~中等度高値】(10,000/μL-50,000μL)感染症,自己免疫性疾患,ストレス,重症の代謝異常,薬物中毒,白血病,骨髄増殖性疾患,妊娠,ステロイド服用 【低値】再生不良性貧血,抗癌薬投与,薬物アレルギー,放射線照射,癌の骨髄転移,骨髄異形成症候群,巨赤芽球性貧血,脾機能亢進症,腸チフス,ウイルス感染症,骨髄腺維症,粘液水腫,AIDS,無顆粒球症 |
血小板数(Plt) | 15.8-34.8×104/μL | 【高値】本態性血小板血症,真性赤血球増加症,慢性骨髄性白血病,骨髄線維症 【低値】特発性血小板減少性紫斑病,薬物性血小板減少症,再生不良性貧血,白血病,巨赤芽球性貧血,脾機能亢進症,遺伝性血小板減少症 |
プロテインC | 活性:64-146% 方法により異なる |
【低値】プロテインC欠乏症(先天性) |
プロテインS | 活性:60-150% 方法により異なる |
【低値】プロテインS欠乏症(先天性) |
Dダイマー | 1.2μg/mL以下,キットごとに異なる | 【低値】二次線溶亢進状態(DIC,静脈血栓塞栓症) |
C反応性蛋白(CRP) | 成人:0.00-0.14mg/dL 冠動脈疾患のリスクファクターとして微量(低濃度)の血清CRP測定値の臨床的意義あり |
最も鋭敏に変動する急性期相蛋白質として体内の炎症,組織傷害を反映する |