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PTSMA療法をすすめられたが不安

50歳 男性
2007年10月27日

肥大型閉塞性心筋症で、現在、心房細動が除細動でも止まらない状態です。カテーテル検査では、圧力差が中度から高度、心室中核は肥大がかなりあり、左心室の流失路がかなり狭まっているとこのこと。現在は、アンカロンとロプレソールを服用しています。なお、父と祖父が50代で突然死をしています。
主治医より、PTSMA(経皮的中隔心筋焼灼術)をすすめられました。しかし、PTSMAの安全性への不安と、1度では終わらない(様子を見ながら最低1ヶ月間をおいて数回やらないとわからない)といわれ、悩んでいます。また、あまり症例がないということも不安です。
心房細動がとまらなくなったのはごく最近で、PTSMAをやることにより治まる可能性もあるが、なんともいえないそうです。主治医によれば、不整脈・閉塞性の処置、心房細動の処置、突然死処置、これらの処置を上手く組み立て手術する必要があるとのことです。

回答

はじめに、PTSMA(経皮的中隔心筋焼灼術)とは、カテーテルで心臓にエタノールを注入して心筋の一部を壊死させる治療法です。
今回の質問の場合、まず、以下のようなポイントが大切になると思います。1)症状の程度および治療(薬物)による改善の程度、2)圧較差の治療(PTSMAも含めて)方法、3)心房細動とそれに伴う血栓塞栓症(とくに脳梗塞)の予防、4)突然死の予防、5)長期的な心機能の変化、6)家族性の意味(遺伝子の評価)、7)家族とくに子どもの評価。

1)自覚症状、および薬物治療での改善具合:お問い合わせの中には自覚症状についての記載がありませんので、PTSMAの適応について判断できない部分もあります。一般的には、労作や運動時の息切れや胸痛などにより日常生活が制限され、薬物治療でも改善が十分でない場合にPTSMAの適応となります。

2)圧較差の治療:現在服用中のベータ遮断薬(ロプレソール)でも圧較差軽減が期待されますが、それに加えてシベンゾリンやジソピラミドなどにより圧較差が減少する可能性があります。これらの薬物治療が効果が少なく、症状が改善されず高度の圧較差が残存する場合には、PTSMAや外科手術などが選択肢となります。問題は、いずれの方法も日本では症例数が少なく、経験が豊富な施設がない点です。

3)心房細動と合併症の予防:心房細動が始まれば、血栓梗塞症(とくに脳塞栓)の発症を予防するためにワーファリンによる抗凝固療法が必須です。まだ、この治療が開始されていなければ、担当の先生と相談して始めてもらうことをお勧めします。

4)突然死の予防:この方にとって最も大切な点であると思います。現在服用中のアンカロンにもある程度の予防効果が報告されていますが、確定的ではありません。最も確実な方法は、植込み型除細動器です。突然死の家族歴もありますので、一次予防として適応になると考えます。(電気生理学的検査やホルター24時間心電図によって心室頻拍を同定・検出することができれば、さらに適応は確実となります。)PTSMAで圧較差が軽減しても、不整脈による突然死の予防には、あまり効果があるとは言えないと思います。

5)長期的な変化:現在の心肥大の程度、心機能障害の程度についての情報がありませんが、10年単位でみると心機能障害や心拡大が少しずつ進行する患者さんが多いようです。PTSMAがこの長期的な変化を改善する可能性はまだ明らかではありません。

6)家族性の意味:遺伝的な評価を行うことも大切です。遺伝子の異常の種類により症状の進行や今後の見通しについての情報が得られる可能性があります。

7)家族とくに子どもさんの評価:遺伝的には常染色体優性遺伝である場合が多く(子ども2人に1人の割合で遺伝)、子どもさんに肥大型心筋症が伝わっていないかの評価を早く行うことが勧められます。いろいろな問題が生じる前に予防的に対策をたてることが可能となります。

最も重要なことは突然死をいかに予防するかという点だと思います。上記(1)?(7)について参考にしていただければ幸いです。

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