肥大型閉塞性心筋症の治療
回答
心臓壁の肥大・肥厚をきたし、内腔が狭まり、拡張障害を起こす原因不明の心筋疾患を肥大型心筋症といいます。その中でもあなたのように左室流出部の狭窄を起こした場合を肥大型閉塞性心筋症と呼んでおります。一般にこの病気の多くは息切れ、呼吸困難、動悸、胸痛、失神、易疲労感などの症状を示しますが予後は比較的に良好です。まれに不整脈や突然死を起こすこともあります。親兄弟など家族内発症がみられ、遺伝要因が考えられており、注意しなければなりません。
お尋ねの治療ですが、薬物療法と非薬物療法に大きく分けられます。
薬物療法には自覚症状の改善のためにワソラン(ベラパミル)やベータ遮断薬の投与が有効です。これは左室流出部の狭窄を緩和するのによいのですが、心筋の収縮力を弱め、徐脈や血圧を低下させる作用があります。またその他の作用として、気管支喘息、心不全などを起こすこともあります。また、左室収縮力を弱める作用が左室流出部の狭窄を減少させるので、左室流出部の圧較差を減少させるのに役立ちます。反対に強心薬は圧較差を拡げます。
非薬物療法としては左室流出部の狭窄を軽減させる目的に恒久的心房心室ペーシングや外科的手術として心室中隔心筋切除手術あるいは僧帽弁置換手術または両者の併用が試みられております。医師からすすめられているのは、おそらくこれらの方法かと思われます。
なお、最近、新たな低侵襲治療の1つとして、カテーテルを挿入する経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)が開発されております。これは心室中隔冠動脈枝に心エコー図を応用して選択的にカテーテルを挿入し、そこから、エタノールを注入して、心室中隔を壊死に陥らせ、左室流出部狭窄を改善しようとするのものです。いわば外科的中隔心筋切除術の代替治療ともいうべきものです。しかし、本法は未だ開発途上にあるといってよく、本法によく習熟した専門医に依頼する必要がありましょう。本法では期待される方法ではありますが、普及するまでもう少しお待ちになったらいかがですか。