疾患別解説

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閉塞性肥大型心筋症の治療選択

57歳 女性
2004年6月25日

57歳の母が閉塞性肥大型心筋症です。左心室の筋肉が全体的に大きくなっているが、中隔に特に大きな肥大が見られ、圧力差が190あると言われました。担当医師からは中隔切除術、カテーテル術、薬の3つの方法があり、そのうち手術を勧められましたが、症例が少ないため経験がないと言われ不安を感じています。
本人は薬での治療を希望していますが、本当にそれでいいのか家族としては迷っています。本当はやらなければいけない手術を先延ばしして状態を悪化させてしまうのではないかといった心配もあります。

回答

この病気は心臓の筋肉の肥大と心室拡張機能の低下を特徴とする心筋疾患です。そのうちの一部の例では左室の心室中隔に異常な膨隆を生じ、左室流出部内腔を狭ばめ、その前後に左較差を生じ閉塞を起こすものがあり、閉塞性心筋症と呼びます。
この病気は経過が比較的に緩慢(かんまん)かつ良好で、あまり隔床症状を示すことなく、5年あるいは10年の生存率はそれぞれ90%あるいは80%といわれております。
しかし、ときに突然死をきたすことがあり、また経過中に心内腔の拡張を生じ、拡張型心筋症に移行し、心不全状態に陥ることもあります。
この病気の診断には心臓カテーテル法、心エコー図法、心エコー・ドプラ法、心筋生検法などがあり有用です。
治療方法はまず内科薬物療法で、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬などによって心拍動を抑えることが有用です。反対に心拍動を高める強心薬の投与は閉塞を強め、症状を悪化させるので禁忌とされております。
左室内腔の膨隆を除去するために、その部分の筋肉を切除除去することが試みられておりますが、特定の施設を除いてあまり普及しておりません。
発作性あるいは慢性の心房細動を伴う場合には抗凝固薬の投与を行って、血栓塞栓症の予防を行います。
心室性不整脈や突然死の予防のためにはアミオダロンによる薬物療法あるいは植込み型除細動器の装着を検討する必要があります。
結論から申しますと、症状は未だ重くないので現段階では内科的薬物治療を主眼として、治療を行うことをお奨めします。手術治療は未だ確立された方法とはいえないので積極的にとりあげる必要はないものと思います。

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