若い女性の弁置換術の選択
先天的に大動脈弁の変形があり、現在まで経過を見てきましたが、1年ほど前に違和感を覚えたため、カテーテル検査などを受けました。その結果、弁自体の病状の変化はありませんでしたが、心臓の肥大、また血液の逆流は4段階のうちの3レベルまできているとのことでした。
しかし、緊急を要するほどではないとの医師の判断から、もう少し経過を見ていくことになりましたが、最近になって、また少し心臓が痛んだり、動悸を感じたり、疲れやすくなったような気がします。
弁置換手術を受けるべきでしょうか。人工弁の場合は薬の副作用で胎児に影響を与えると聞いていますし、生体弁の場合は耐久性にかけるとも聞いています。
医療もどんどん進化している現在、何か他の治療法はないのでしょうか。
回答
大動脈弁弁膜症は一般的には症状が出る少し前に手術をするのが一番よいと言われています。あなた様の場合、お話を読ませていただいているだけで判断するのは危険ですが、すでに若干の症状があるようですので、これが心臓に基づく症状であればやはり手術をお考えになるべき時期であると思います。
しかし、担当の医師がもう少し経過を見ようといわれるのは、あなた様がまだお若く、今後出産をされる可能性があるために、人工弁を使用した場合の薬の副作用について危惧しておられるからであろうと思います。特に若い年代で生体弁を入れると、弁の機能不全を来たすまでの期間が短いのです。お聞きになっていると思いますが、出産を期待するのであれば服用する薬の関係で生体弁のほうがよいのですが、このような問題があるのです。
一方、機械弁の場合は、服用しなければならない薬(主としてワーファリン)との関係で出産できる可能性はきわめて低くなりますので、よくご自身の人生設計と付き合わせてお考えになる必要があると思います。担当された医師とじっくりお話をされて方針をお決めください。
何か他の治療法はないかということですが、ただ一つ考えられるのはご自身の肺動脈弁を取って大動脈弁の置換に使用し、肺動脈弁は大動脈弁ほど重要性がありませんので、他の代用物で取り替えるという方法です。この方法は、かつてはかなり危険を伴いましたが、現在では、たくさん行なっている施設においてはほぼ普通の大動脈弁置換と同じ程度のリスクで受けることができます。これについても担当医とよくご相談ください。