妊娠を考慮した弁置換選択
先天性心疾患で、4歳の時に多脾症候群、僧帽弁閉鎖不全などの手術を受けました。
その後、20年経過しましたが、先日、担当医より僧帽弁閉鎖不全で左心房が2倍に肥大しているとの検査結果で、手術が必要といわれました。以前手術した弁は、カルシウムが付着し、弁も短く動きがカックンとしているとのこと。
手術内容としては、形成術、生体弁、人工弁があるといわれ、私の場合、80%のくらいの確率で人工弁になりそうです。
人工弁にすると、ワーファリンを飲みつづけ、妊娠、出産はあきらめてもらっていると言われてしまいました。私は子どもが大好きなのですが、本当に出産はできないのでしょうか。
生体弁も人工弁も約10年で取替えが必要と聞きました。何度も手術しなければならないのでしょうか。
回答
難しい手術をお受けになって20年が経過したということですが、手術された僧帽弁が石灰化しているのだと思います。形成術で対処できる可能性はほとんどないと思います。
弁置換をする場合、人工弁として生体弁を使うか機械弁を使うかというのが一番の問題だと思います。機械弁にするとワーファリンを飲み続けなければなりません。出産はほとんどあきらめなければならないでしょう。妊娠中もある一定の期間、ヘパリンに替えて血栓を防止するということは理屈では可能ですが、現実的にはほとんど不可能だと言ってよいと思います。
一方、生体弁に取り換えると、心房細動という病気になっていなければ、ある一定の時期、ワーファリンを飲まずに、妊娠と出産を経過することも可能です。しかし機械弁の場合には20年くらいの耐用期間がありますが、生体弁の場合には、貴方の年齢であるとおそらく5年乃至10年の間に取替えを必要とするようになると思います。それでもなお、その間に出産をし、その後にもう一度機械弁に取り替える決心がつけば、妊娠されることも可能です。配偶者とよくご相談になってお決めになることが必要だと思います。
なお、機械弁については、現在、20年くらいは使用可能ですが、その先どれくらい引き続いて可能であるかは、まだ分からないのが現状です。30年、40年と一つの機械弁で維持することが可能であるかもしれません。この点は今までに機械弁を入れておられるたくさんの患者さんの経過を見ながら判断されることになると思います。