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大動脈瘤と弁閉鎖不全の手術

64歳 男性
2005年8月21日

先月の健康診断の胸部X線で大動脈瘤の疑いが判り、CT撮影とエコー撮影で、大動脈瘤の大きさは5.5cm、逆流での解離はないとの診断されました。近々、検査入院をして、カテーテル検査をし、手術の方法や範囲について決めることになりそうです。

現在、自覚症状はほとんどありません。手術について不安がありますので、教えてください。
1)大動脈瘤と心臓弁膜症の手術は一緒にしたほうがよいのでしょうか?また、大動脈瘤のステントグラフト内挿術やカテーテルを介入して挿入した(血管内挿型人工血管)等の成功率は?
2)弁膜症での人工弁と金属性の機械弁どちらが永続性を考えて選べば良いのでしょうか? 

回答

大動脈瘤と弁膜症という病名をお聞きになっていますが、大動脈瘤は大動脈の色々な場所にできますし、弁膜症も心臓には4つの弁があり、どの弁が悪いのか、あるいはその弁が狭窄なのか、漏れができる閉鎖不全なのかといったことで、すべて状況は異なりますので、書かれたことだけでは責任のあるお答えはできないといった方がいいのかもしれません。しかしどうやら上行大動脈瘤と大動脈弁閉鎖不全を合併しておられるようですので、一応その組み合わせであるとしてお答え致します。

1)現在のお体の状態は良いように思いますので、大動脈瘤と大動脈弁の手術を行なわれて、さほど大きな危険はないと思います。上行大動脈瘤の手術は日本胸部外科学会が毎年全国集計している成績から見ますと、大動脈弁の修復や置換を同時に行った場合を含めて手術死亡率が3%くらいです。また、上行大動脈瘤と大動脈弁弁膜症の場合は、これらを別々に手術することはありません。別々に行なうとかえって危険は増えることになります。また、大動脈瘤に対するステントグラフトの内挿術は、上行大動脈瘤については適応は無いと考えて良いと思います。

2)大動脈弁を入れ替えるということになった場合に機械弁と生体弁のどちらが良いかということについては、貴方の場合非常に悩ましい問題です。もう5年乃至10年高齢であれば、生体弁を植えられることをお勧めしますが、現在のお年であればやはり向こう20年位は確実に耐えうる機械弁を用いる考えの方が一般的であると思います。ただ、この場合、早期に認知症などになられて、この機械弁が有効に機能するための薬の服用を正確に行うことができなくなると、この弁を長持ちさせることはできません。ご自身の将来のことをお考えになったうえで主治医とよくご相談になるのが良いと思います。

なお、上行大動脈瘤と大動脈弁閉鎖不全の場合は上行大動脈瘤の手術をすれば、弁置換を行なわなくても弁閉鎖不全の修復術を行なうことができる場合もあります。
貴方の場合はその可能性は少ないと思いますが、もしこれができれば、術後の薬の服用は不要になります。その最終的な決断は術中に外科医が判断することになると思いますので、手術前によくお尋ねになっておくのが良いと思います。

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