大動脈弁置換術と不整脈治療
10代の頃に大動脈弁閉鎖不全症と診断され、10年ほど前より肥大型心筋症、2?3年前から不整脈があります。現在の心機能はNYHAで2?3程度です。
最近、心室性期外収縮が毎日連続して現れるため、手術の決断時期かと思っています。
1)不整脈は手術受け入れの要素となりますか(弁膜症と心筋症のどちらの要素が大きいのでしょうか)
2)市販本では心筋肥大は手術のリスクが極めて高いとありましたが、弁置換手術の死亡率3%前後に対し、どの程度の数値になりますか。
3)生体弁は手術が難しく時間もかかるようですが、上記のリスクを踏まえ、生体弁の選択は可能でしょうか。
4)上記症状で手術はどう判断すべきでしょうか。
回答
1)一般的には、不整脈の治療、抑制を目的にして弁置換手術を考えることはありません。弁置換手術によって不整脈のコントロールができるかどうか不明な場合が多いからです。大動脈弁閉鎖不全による左心室への負荷は弁置換手術によりとれますが、不整脈の直接の原因になっている心筋の電気的障害が除かれるあるいは軽減できるかどうかは必ずしもわかりません。特に、あなたの場合不整脈の発生に弁脈症と心筋症のどちらがより関わっているかわかりませんので、弁置換手術によって不整脈のコントロールができるとは必ずしも言えません。
2)心筋肥大が顕著であれば手術のリスクは高くなりますが、患者管理法や外科技術の進歩によりずいぶん改善しています。手術のリスクは病院によって一概に言えませんので、通院しておられる病院の成績をお尋ねくださるようにお勧めいたします。
3)一般的に言えば、生体弁だからといって特にリスクが大きくなるとは考えません。
4)これが最も重要なご質問と思います。大動脈弁閉鎖不全による左心室機能の変化が弁置換手術を考慮すべき程度にまで進行しているのでない限り、現時点での手術は勧められないと考えます。左心室の大きさはまだ手術適応の大きさにはなっていませんし、左心室の収縮機能も駆出率65%と保たれています。自覚症状があると書いておられますが、文面からは不整脈による自覚症状のように思われます。それも心室頻拍などの重篤な不整脈でなく、期外収縮の多発による症状のように思われます。軽い運動時に息切れなどの自覚症状がありますか。もし運動能の低下がなく、不整脈だけが問題であるのなら、上記のように、すぐに手術を考えるということにはならないと思います。不整脈(期外収縮の多発)が問題であるのならまずは抗不整脈剤による治療をしてみては如何でしょうか。以前にいくつかの抗不整脈剤を服用されたようですが、アミオダロンという抗不整脈剤は服用されたことがありますでしょうか。まだより効力の強い抗不整脈剤を試しておられないようにも思えます。運動負荷試験は受けられましたか。結果はどうでしたか。また、冠動脈には病変はありませんでしたか。