大動脈弁置換術の高齢と透析によるリスク
79歳の父についてご相談します。
5?6年前より大動脈弁狭窄症と診断されました。動脈硬化もかなり進んでいるようです。
父本人の強い希望と担当医のすすめもあり、手術をする方向で話が進んでいます。
しかし、高齢だということと、10年前から週3回の人工透析をしていることもあり、リスクが高いのではないかと心配です。このような状態で手術に臨むことは危険ではないのでしょうか。
回答
高度の大動脈弁狭窄症ですので、手術適応がある可能性が高いと思います。
一般的には胸痛、失神、心不全などの症状が出現した時点では大動脈弁置換手術を速やかに行ったほうが良いと考えられています。
高齢でも大動脈弁置換術の成績は遜色がないことが報告されていますので、ある程度の症例数を行っている施設であれば、手術による危険性は少ないはずです。
問題は人工透析を受けておられることで、一般の方よりも動脈硬化がすすんでいることが多く、大動脈や弁の石灰化が高度になり、手術が難しくなることがあります。また、冠動脈疾患を合併していることも多く、冠動脈バイパス術を同時に行う必要があることもあります。冠動脈疾患は高解像度のCTかカテーテル検査でわかります。術後の水分や電解質のコントロールも透析での管理となりますので、そうでない方にくらべて少々手間がかかります。
高齢透析により手術の危険性はやや多くなりますが、現時点で大動脈弁狭窄症による症状が出現しているのであれば、突然死の可能性が高くなりますので早期に大動脈弁置換手術を受けられることをお勧めいたします。