大動脈弁狭窄症の手術時期と生体弁の耐久性
現在、ペースメーカ装着しています。先日、心臓喘息発作があり、そのときの検査で大動脈弁狭窄症と診断を受けました(圧力差64mmHg、弁開口部0.9cm2、心室壁厚14mm)。主治医からは、1年以内に弁置換手術が望ましいと言われ、65歳以上だと生体弁をすすめているそうです。生体弁の耐用年数は20年くらいだそうです。
1)術後の制約の少ないことと血栓が心配なので生体弁置換手術を受けようと考えています。将来ポートアクセス手術や技術の進歩で、再手術の負荷や危険が軽減されること希望的観測として期待したいのですが、何か期待できる材料はありますでしょうか。
2)一年以内の弁置換手術までの間の定期チェックも薬もないのですが、この間気をつけることはあるでしょうか。
3)生体弁の耐久性(耐用年数)は54歳の現在置換手術をしたとして、どれくらいの範囲で考えればよいでしょうか。寿命が来た時点(70?75歳くらい)での再手術の危険性はどのように見ればよいでしょうか。
回答
1)について
ポートアクセスは大動脈弁置換にはまだ用いられていませんが、大動脈弁閉鎖不全症に関しては、カテーテルで行う弁置換も試みられています。しかし狭窄症に対してはまだ今のところ、カテーテルによる弁裂開以外の手段は開発されていません。ただ、こういった治療は日進月歩ですので、20年先の再手術の時にはかなり色々な手技が開発されていることは期待できます。現在のところでは開心術による弁置換が最も信頼できる方法です。
2)について
安静時でも大動脈弁のところに60mmHgもの圧差があるのですから、血圧が上がるような場面に遭遇すると、左心室の中の圧はもっともっと上がることになります。したがって、一般に血圧を上げるようなことはできるだけ避けることです。1年以内に手術を受けるようにと云われておられるようですが、望ましいのは早く手術を受けることです。圧差が64mmHgあって、発作があったというのであれば、手術は早いほうが望ましいと思います。仕事の段取りがつけば早く手術をお受けになることをお奨めします。
3)について
聞いておられる通り、現在の生体弁の耐用年数は約20年と言われていますが、現在使われているものが本当に人間の体の中で20年経っているという訳ではありません。したがって、一番新しい形のものは20年は耐えうると考えられていますが、あくまでも現在までの臨床及び実験成績などから推測しているに過ぎないと思います。又代用弁は人間の体の中に入れる訳ですので、個人個人の体が夫々違いますから、耐用年数にも大きな幅が出来ます。20年と言っていても、10年で駄目になることもありますし、20年を越えて用いられている場合もあると思われます。もし、いわれている通り20年で再手術が必要となった場合、70から75歳であれば、一般的には若い人とそれほど手術による危険は変わりません。ただし、現時点の統計的数字からいうと、初回手術では全国平均で約3%の手術死亡がありますが、再手術ではそのおよそ倍くらいの手術死亡が報告されています。