大動脈弁形成術の成功率
先天性の大動脈弁閉鎖不全で、ここ10年くらいは経過診断として年1回エコー検査を受けておりましたが、今年の夏の検査結果で手術を勧められました。閉鎖不全による逆流により左心室が肥大しているそうです。左心室の大きさが健常者の数値が100前後のところ213となっていました。近々、弁形成手術を受ける予定です。
執刀医の先生からの説明では、機械弁への置換え手術ではなく、形成術で大丈夫とのことでした。もちろん、希望すれば機械弁置換手術をしてくれるのでしょうが、手術後の生活を考えると制約のほとんどない形成術を私も希望しています。
インターネット等でいろいろ調べてみますと、大動脈弁の形成術についてはあまりなく、僧帽弁の形成術がほとんどでした。医療の世界は日進月歩なので、今日では珍しくないのかもしれませんが、以下の疑問についてご教示いただけますようお願い申し上げます。
1)大動脈弁形成術は今日では珍しくないのでしょうか。
2)また、成功率はどれくらいなのでしょうか。
回答
先天性の大動脈弁閉鎖不全、殊に他に何の合併症も無い場合はかなり珍しく、したがって、それに対する弁形成術は今日でも珍しいほうに属します。ですから、その成功率については統計が出ていません。また、形成術の場合はどれくらい逆流を止めることができれば成功と言えるのか難しいところで、手術は無事に終わっても逆流がうまく止められていなければ成功とは言えません。
逆に手術による危険、つまり死亡率についても閉鎖不全だけについての統計はありませんが、先天性の大動脈弁疾患で手術した場合の手術死亡率は大体2?3%ぐらいという統計が出ています。
お話の中で少し気になることは、形成術で大丈夫と言われたということです。弁の状態はいくら診断技術が進んでも、最終的には弁を見てみなければわからないのが普通です。したがって、どれほど熟練した外科医が手術をしても弁置換手術になる可能性をまったく否定することはできないと思います。ただし、大動脈弁閉鎖不全が単独ではなしに上行大動脈の拡張とか、あるいは小さな心室中隔欠損が一緒にある場合は弁形成によって治癒させることができる可能性はかなり高くなり、この場合であれば形成術で治療するということを前もって申し上げることも可能だと思います。