冠動脈造影とマルチスライスCT
77歳
男性
2013年4月11日
急性心不全で緊急搬送後、一命は取り留めました。カテーテル検査で狭窄部ありとのことで、回復後にカテーテル治療を行うことになっています。しかし、現在の病院の主治医と合わず、病院を変えたいと思っています。近所の循環器専門病院にはマルチスライスCTという機械があるそうです。これで検査すると、もっとよく病気のことがわかるのでしょうか。費用はどのくらいかかるのでしょうか。その後の治療法も変わりますか。
回答
循環器内科の診療において急性心不全は近年、ますます増加しております。とくに高齢の方の急性心不全による入院の方が多くなっています。高齢者の方は、背景に様々な病態があり、予備力も少ないことから適切な対応が最も必要とされる状況です。さまざまな原因により急性心不全をきたしますが、そのなかで重要な疾患に冠動脈疾患があります。冠動脈疾患は虚血性心疾患ともよばれ、狭心症や心筋梗塞などがありますが、心臓の筋肉を栄養する冠動脈に狭窄ないし閉塞があり、そのために心筋が虚血(酸欠状態に似ています)に陥り、その機能すなわち収縮や拡張する能力が低下します。さらに進んで梗塞になると心筋細胞が壊死し、収縮の機能がなくなります。そのために、心臓のポンプとしての機能が著しく低下します。ご質問の内容から推察すると、すでに冠動脈造影はされており、狭窄ないし閉塞があり、主治医の先生から冠動脈形成術を勧められているものと思います。心筋虚血が原因の心不全では、通常、虚血を解除(血流をよくすること)しないと、回復は見込めません。とくに太い血管(根元に近い部分)の狭窄ほど、その効果は大きいと言えます。薬などで、一時的に良くなるはあっても、多くは、再発します。
冠動脈CTは、造影剤を静脈注射することにより冠動脈の病変を診断する方法ですが、冠動脈までカテーテルを挿入して冠動脈を直接造影する冠動脈造影以上の情報は得られません。今の状況は冠動脈CTを行う意味はないといえます。
今、行うべきこととして推薦できるのは、主治医の方に、冠動脈造影の所見を十分説明して頂き、冠動脈のどこをどのように拡張するのか、拡張するとどのように良くなるかを説明していただくことが重要と思います。主治医の方と意見が合わないばあい、あるいは、コミュニケーションが十分に取れない場合には、セカンドオピニオンを受けるために、現在の主治医の先生から情報提供(冠動脈造影所見を含めて)をしていただき、セカンドオピニオンの先生に相談されるとよいと思います。
参考:マルチスライスCTの検査費用とどんな機器か?
1.先にマルチスライスCT(MSCT)についてご説明いたします。
CT検査はX線を用いて体の断層を撮影する検査です。従来は検出器が体の周りを1回転すると1スライスの画像が撮影できました。MSCTは検出器を複数配置することにより1回転で複数の横断像を撮影できるようになった装置です。このことで従来のCTに比べて、より速く、より細かく、より広く検査が行えるようになりました。
そのため、以前はCT検査では評価できなかった冠状動脈の病変も評価できるようになりました。
冠状動脈の形態学的評価は、以前は心臓付近までカテーテルといった管を入れなければ評価できませんでした。しかし、MSCTの登場によって、カテーテル検査を行わなくてもある程度評価できるようになりました。苦痛が少なく、検査時間も短くなったわけです。
しかし、MSCTにも欠点はあります。そのひとつは、血管の石灰化が強いと内腔の評価が難しいということです。こういった例での正確な評価はカテーテル検査に劣ります。もう一つの欠点は、血管が痙攣して起こる冠攣縮狭心症の診断に向いていないということです。正確な診断はカテーテル検査で人工的に痙攣を誘発することによって行われます。
多少の欠点はありますが、MSCTで異常なしと診断された場合はかなりの確率で病変が存在しないと言えますので,病気が存在しないという除外診断には非常に有用です。
2.次に検査費用ですが、CT機種の検出器の列数によって異なります。診療報酬の点数は下記の通りです(2013年4月現在)。
2列 600点(6000円)
4列以上16列未満 780点(7800円)
16列以上64列未満 900点(9000円)
64列以上 950点(9500円)
その他に加算されるもの
電子画像加算 120点(1200円)
コンピュータ診断料 450点(4500円)
その他に造影剤を使った場合は使用量による加算があります。
冠動脈CTは、造影剤を静脈注射することにより冠動脈の病変を診断する方法ですが、冠動脈までカテーテルを挿入して冠動脈を直接造影する冠動脈造影以上の情報は得られません。今の状況は冠動脈CTを行う意味はないといえます。
今、行うべきこととして推薦できるのは、主治医の方に、冠動脈造影の所見を十分説明して頂き、冠動脈のどこをどのように拡張するのか、拡張するとどのように良くなるかを説明していただくことが重要と思います。主治医の方と意見が合わないばあい、あるいは、コミュニケーションが十分に取れない場合には、セカンドオピニオンを受けるために、現在の主治医の先生から情報提供(冠動脈造影所見を含めて)をしていただき、セカンドオピニオンの先生に相談されるとよいと思います。
参考:マルチスライスCTの検査費用とどんな機器か?
1.先にマルチスライスCT(MSCT)についてご説明いたします。
CT検査はX線を用いて体の断層を撮影する検査です。従来は検出器が体の周りを1回転すると1スライスの画像が撮影できました。MSCTは検出器を複数配置することにより1回転で複数の横断像を撮影できるようになった装置です。このことで従来のCTに比べて、より速く、より細かく、より広く検査が行えるようになりました。
そのため、以前はCT検査では評価できなかった冠状動脈の病変も評価できるようになりました。
冠状動脈の形態学的評価は、以前は心臓付近までカテーテルといった管を入れなければ評価できませんでした。しかし、MSCTの登場によって、カテーテル検査を行わなくてもある程度評価できるようになりました。苦痛が少なく、検査時間も短くなったわけです。
しかし、MSCTにも欠点はあります。そのひとつは、血管の石灰化が強いと内腔の評価が難しいということです。こういった例での正確な評価はカテーテル検査に劣ります。もう一つの欠点は、血管が痙攣して起こる冠攣縮狭心症の診断に向いていないということです。正確な診断はカテーテル検査で人工的に痙攣を誘発することによって行われます。
多少の欠点はありますが、MSCTで異常なしと診断された場合はかなりの確率で病変が存在しないと言えますので,病気が存在しないという除外診断には非常に有用です。
2.次に検査費用ですが、CT機種の検出器の列数によって異なります。診療報酬の点数は下記の通りです(2013年4月現在)。
2列 600点(6000円)
4列以上16列未満 780点(7800円)
16列以上64列未満 900点(9000円)
64列以上 950点(9500円)
その他に加算されるもの
電子画像加算 120点(1200円)
コンピュータ診断料 450点(4500円)
その他に造影剤を使った場合は使用量による加算があります。