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大動脈弁置換手術後ですが、富士山に登ることは可能でしょうか

42歳 男性
2016年2月15日

 3年前に大動脈弁置換手術で、機械弁をいれました。術後にリハビリのつもりで始めたウォーキングが高じて、山歩きをするようになりました。登山時には心拍数が上がりすぎないようにペースを加減しています。年に一回、手術を受けた病院で検診をうけ、心肺運動負荷試験も行っています。ワーファリンとアスピリンをのんでおり、主治医からは出血時に不安があるので、滑落の危険があるような場所は控えるように、また、高所に行く場合には水分補給に気を付けるように言われています。

 最近、高い山に挑戦したい気持ちがでてきました。標高3776メートルの富士山に登れるでしょうか。また、氷点下5度前後の気温の中で、1500~2000メートル級の登山ができるでしょうか。

回答

 大動脈弁の置換手術をうけ、その後の経過は良好な患者さんであり、運動能力は保たれている方と拝察します。ご自身もリハビリに励み、定期的に心肺運動負荷試験を行って、運動中の心機能をみていただいているので有酸素運動についての理解も十分におありの方と思います。

 ご質問は登山のご希望が叶えられるかということです。登山の場合には運動耐容能の他に、酸素濃度を考慮しなければなりません。富士山の五合目、2400メートル程度になると酸素濃度低下の影響が大きくなります。健常人でも普段と同じ速度で歩くと息切れするようになります。これは海抜0メートルに比べると酸素圧が8割程度に下がっているので、酸素不足になるためです。海抜1500メートル程度までであれば、半分くらいの歩行速度で、心拍数が毎分85を越えない程度のゆっくりした歩行ならば可能と推測しますが、それ以上の高度での歩行はおすすめできません。

 自然のなかでの運動では、自分ではいくら気を付けていても、気温や風など、コントロール不可能な要素が多くあり、運動の強さだけでは計算できない多くのストレスが加わります。ちなみに、心血管病の事故がもっとも多いスポーツは、天候などの自然の影響を受けやすいハイキングであり、2番目がゴルフです。

 運動中の脱水にも特別な配慮が必要です。登山では水分を失いやすいので、水分補給を忘れないようになさってください。機械弁の場合にはワルファリンという薬が処方されていると思いますが、これは怪我をしたとき出血が止まりにくくなるなどの問題があります。

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