心臓リハビリテーションとは
運動訓練は心臓・血管系ばかりでなく、骨格筋を鍛え、自律神経・内分泌調節機能を調整し易いように整えることで、日常生活活動を一層、円滑に維持できるようにします。心疾患がある患者の場合には、日常生活への復帰を図るためばかりでなく、心機能そのものを維持・回復する治療効果が高いと評価されています。心疾患があるときの運動訓練を心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)といい、段階に応じて安全で効果的な運動の進め方、すなわち運動の種類や強さ、時間、頻度などを提示することを運動処方といいます。
運動処方は障害された心臓に過重な負担をかけないように運動を行い、衰えた体力(運動耐容能)を高め、骨格筋や心機能を次第に改善することを目的とするものです。
心臓リハビリにおける運動処方は次のような手順で進められます。一般に軽い運動で、心臓からの血液(酸素)供給が十分な範囲内で行われるものあれば、酸素を使って作った(有気的代謝)エネルギーだけで運動できるので「有酸素運動」といいます。しかし、運動強度が増してきて、心臓の能力を超えてくると活動筋では酸素が不足するようになり、酸素を使わずに作ったエネルギー(無気的代謝)による「無酸素運動」が加わります。このとき、乳酸が産生されるようになるので、血液の乳酸を測定していれば、運動が閾値を超えて無酸素運動が始まったと知ることができます。
心疾患患者の運動リハビリは無酸素運動にならない程度の運動訓練を行いながら、この閾値(嫌気性代謝域値または無酸素性作業閾値、AT)を次第に高くしていくことを目的とします。病院では心肺運動負荷試験を行って、この有酸素運動の上限を測定し、このときの心拍数を運動の限度とする目標心拍数を設定して、許容される運動の程度を決めます。これが運動処方箋です。自覚症状の上からは、おしゃべりをしながら運動をしたとき「息切れ」を感じるようなら閾値を超えたと考えてよいでしょう。血液の乳酸濃度が高まると脳の呼吸中枢が刺激され、過呼吸状態になり、これが息切れとして自覚されるからです。
心臓リハビリは長期間続けるほど効果があるのですが、患者さんそれぞれの病状や体力に合わせた専門のプログラムが必要なため、医療従事者や運動指導者の管理が必要です。
しかし、5ヵ月で保険診療期間が切れてしまうため、病院で継続することが難しくなっています。
そこで、保健医療の継続申請や「選定療養」として患者負担で行う方法のほか、NPO法人ジャパンハートクラブの運営するメディックスクラブのような、各地の既存施設を利用した「心臓リハビリテーション指導士」が指導する運動療法コースなどの利用も有効です。
近年、こうした心臓リハビリテーションの運動療法は、心臓病予防としても活用されています。
妊娠と期外収縮、小学校の心電図検診でQS型といわれた、不整脈と弁膜症で心不全に、狭心症の疑いなど、日本心臓財団は7,500件以上のご相談にお答えしてきました。