小児の2度房室ブロック
15歳の子どものことで相談します。小学校の頃からサッカーを続けており、毎日激しい練習をしています。中学校の心電図検査で、1年の時、ウエンケバッハ型房室ブロックを指摘されましたが、心エコー検査、ホルター心電図検査にて異常がなく、トレッドミル検査でも異常がなかったので、運動制限はなしでした。2年時もウエンケバッハ型でしたが他の検査でやはり異常がなく、運動制限も受けませんでした。
ところが、今年の病院での検査で、完全房室ブロックと言われました。今後、いろいろな検査を受けることになりますが、運動制限のことなど大変不安です。
回答
正常な心臓の歩調取りである洞結節(洞房結節)より出された電気刺激は、心房を収縮させると同時に、右心房下部にある房室結節を通過してヒス束、脚枝を経由して左右の心室に到達して心室を収縮させています。
2度房室ブロックとは、洞結節より出された電気的興奮が房室間で間欠的に途絶する状態をいいます。2度ブロックには房室伝導時間(PR間隔)が徐々に延長して、房室伝導が途絶するウエンケバッハ型と房室伝導時間が延長することなく突然に房室伝導が途絶するモビッツ(1)型ブロックに分類されています。前者のウエンケバッハ型ブロックは一般に良性とされています。
■■■小児期における2度房室ブロックのチェック項目■■■
1)房室ブロックを生じる基礎の病気はありませんか。
2)息切れ、めまい、ふらつき、胸苦しさなどの自覚症状はありますか。
3)運動負荷テストで最高心拍数になったときのリズムは正しい洞性リズムですか、それとも房室ブロックの状態が続いていますか。
QT間隔の延長はありませんか、心拍数の上昇に伴うQT間隔の短縮度は正常ですか。
4)ホルター心電図で最長のRR間隔の値は、その際は2:1ブロックそれとも3:2、またはそれ以上の高度房室ブロックでしたか。房室ブロックがみられるのは昼間体動時、安静時、夜間の睡眠時でしたか。房室ブロック時の補充収縮は幅が正常のQRS波か、それとも幅広いQRS波かどちらでしたか。
5)専門医が必要と考えた場合には、入院して電気生理学的テストを行い、得られた詳細な情報のもとに今後の診療と運動管理区分を決定されることがあります。
6)きわめて稀でありますが、ウエンケバッハ型2度房室ブロックが高度ブロックへと進行する場合もありますので、定期的に専門医を受診することは必要です。
基礎の病気がなく、自覚症状もなく、運動時の心電図が正常な洞性リズムであり、ホルター心電図で2:1ブロックをこえる高度のブロックがみられなければ、運動制限は必要ないでしょう。
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日本循環器学会作成の循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2001?2002年度合同研究班報告)
「心疾患患者の学校、職域、スポーツにおける運動許容条件に関するガイドライン」の抜粋を紹介しますので、参考にしてください。
第2 度房室ブッロク(Wenckebach型)はよく訓練された運動選手に多い。安静時にのみ出現し、運動時には消失する,器質的心疾患のない例は、予後は良好であり、軽度リスクである。第2度房室ブッロク(Wenckebach型)が運動中あるいは運動後に始めて現れたり、悪化する場合には、中等度リスクであり、ヒス束内あるいはヒス束下ブロックの可能性についてさらに検査が必要であり、人工ペースメーカ治療を要する可能性もある。第2度房室ブロック (Mobitz 型)ではペースメーカ治療の必要性があり、完全房室ブッロクと同じ運動許容条件である。
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受診先の病院では小児のペースメーカ植え込みや電気生理学的検査の経験があるかどうか、お尋ねしておくことも有意義でしょう。
小児循環器専門医には不整脈に疎遠な医師もみられますので、不整脈に造詣の深い循環器内科医のほうがよいかもしれません。