徐脈性不整脈(房室ブロック、洞不全症候群)とは
脈拍が遅くなる徐脈性不整脈には、房室ブロックと洞不全症候群が含まれます。
「房室ブロック」
洞結節で起こった電気が刺激伝導系を心房から心室へと伝わる際、主に房室結節のあたりで遅くなったり途切れたりすることによって起こる不整脈を房室ブロックと言います。房室ブロックは、電気の伝わり方によって、スピードが遅くなった「第1度」、時々途切れる「第2度」、完全に途切れてしまう「第3度」に分けられ、第3度を「完全房室ブロック」ということもあります。またまったく前兆がなくある瞬間から突然何秒間か電気が途切れてしまうような「高度房室ブロック」と呼ばれる危険な状態もあります。
完全房室ブロックになって上からの電気が心室へまったく伝わらなくなると、通常心室は自家発電のように自分で電気を発生してゆっくりとしたリズムで収縮活動を始めますが、このリズムがうまく出てこなかったり遅かったりすると、失神発作や心不全の原因になります。高度房室ブロックや完全房室ブロックの治療としては、人工ペースメーカの植え込みが行われます。(図)
なお、第1度および第2度房室ブロックの多くは健康人でも時々見られ、迷走神経が緊張することによって起こる生理的なものと考えられます。
「洞不全症候群」
房室ブロックによく似ていますが、重症徐脈性不整脈のもう一つの代表が、洞不全症候群です。洞結節の働きが鈍くなると脈が極端に遅くなり、またその周辺の心房が侵されると洞結節の働きは正常でも洞結節から心房への電気の伝わり方が悪くなって、ひどいときには失神発作を起こすことがあります。これが洞不全症候群とよばれるものです。
図の上段、下段は連続記録で、約10秒の心停止が見られます。この間の心電図はまったくフラットで、洞結節での興奮が起こらない「洞停止」という病態です。「洞不全症候群」では、このように洞結節の機能が低下することによってさまざまな徐脈性不整脈を起こします。やはりペースメーカ治療の適応になります。
監修:加藤貴雄(東武鉄道(株)診療所所長/日本医科大学名誉教授) 更新:2022年3月
妊娠と期外収縮、小学校の心電図検診でQS型といわれた、不整脈と弁膜症で心不全に、狭心症の疑いなど、日本心臓財団は7,500件以上のご相談にお答えしてきました。