総肺静脈還流異常症の術後の徐脈とペースメーカ
現在2歳の娘の件でご相談があります。生後5日目に総肺静脈還流異常症と診断されすぐに手術を行いました。幸い手術は成功して2ヶ月後には退院となりました。その後は問題なく元気だったのですが、9ヶ月になった頃に初めて肺炎にかかり、その後も月に1回くらいのペースで肺炎を繰り返し現在までに9回肺炎で入院しています。
先生の診断では、入院3回目の時に心臓の問題かもしれないとのことでカテーテル検査もしたのですが、特に心臓に問題は見つからなく、抵抗力がつけば徐々に入院もなくなると先生からは言われています。
今回の相談は徐脈であると指摘されたことについてです。先日入院した時に二回目のホルター心電図を付けました。
娘の心拍数は平均54/分で、眠っている時に最低42になります。前回ホルター心電図をとった時は平均60くらいだったので前回より遅くなっていると言われました。
通常の赤ちゃんと比べると半分くらいで、ペースメーカを入れるかどうかぎりぎりのラインだと言われています。
このままでは、もう少し活動量が増えてきたら急に倒れたりすることがあるかもしれないから、普通に生活するためにはペースメーカを入れたほうがいいのではないかと先生は言っています。
もちろん今すぐではなくもうしばらく様子をみてからと言っていますが、本当にペースメーカを入れなければいけないほどの徐脈なのでしょうか。
また、やはり徐脈になったのは総肺静脈還流異常症の影響が大きいのでしょうか。
回答
ペースメーカが必要かもしれないという話をうけ、随分、ご心配のことと思います。
さて、総肺静脈還流異常症の手術後、長い期間がたったあとにみられる好ましくない出来事はいくつかあります。異常血管を左心房につないだ部分が狭くなることが、一番避けたいことですが、カテーテル検査で異常がないので、その心配は無いですね(この場合も不整脈を認めたりします)。徐脈、心房性不整脈などは、好ましくない出来事の一つです。発生頻度も低くはないのですが、ほとんどの場合は、治療せずに経過を見ることが可能です。徐脈にもいくつか種類があります。洞性徐脈、洞機能不全症候群、房室ブロックなどですが、総肺静脈還流異常症の手術後にみられるのは、洞性徐脈、洞機能不全症候群です。多分、洞性徐脈といわれているのだと思います。この場合、ペースメーカを植え込む基準は、心拍数が40/分以下、あるいは心拍が3秒以上あくことがある場合です(アメリカ心臓協会のペースメーカ植え込みガイドラインの内容です)。ペースメーカを入れない状態で、徐脈が進行し、うえの基準を超える、急に意識がなくなったり、けいれんを起こしたり、心不全が進行したりすることが起こる可能性があります。ただ、今の心拍数であれば、慎重に経過を観察して、脈拍の変化をみていくことで良いように思います。これ以上進行することもありますし、また、徐々に徐脈が軽くなっていく場合もあります。ただ、総肺静脈還流異常症の手術後では稀ですが、完全房室ブロックといわれている場合は、手術後進行することが多いので、ペースメーカを植えることが普通です。