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薬によって起こる不整脈

2006年2月 2日
お薬によって不整脈が起こることがあるでしょうか?

回答

体内に入った薬剤は、飲み薬の場合は消化管から吸収され、注射の場合は直接血液中に入ります。血液中に溶け込んだ薬剤は全身を循環しますから、当然心臓にも到達します。つまりどのような薬剤でも、強弱の違いはありますが必ず心臓に何らかの作用をもたらすのです。

 もちろん心臓病以外の病気に対する薬剤は、普通に用いる量では心臓に及ぼす作用はきわめて弱く、ほとんど無視してよいのですが、大量になったり他の薬剤との相互作用(飲み合わせ)で体内の薬物濃度が予想外に濃くなったりすると、思いもよらなかった作用が心臓に出ることになるのです。

 これによって新たに不整脈が発生したり、もともとあった不整脈が悪化することがまれにあり、このような作用を薬剤の「催不整脈作用」、新たに出現した不整脈を「催不整脈(プロアリズミア)」と呼んでいます。

 催不整脈作用が現れるときには、多くの場合、心電図にQT時間の延長という変化が現れますので、心電図を定期的に記録して少しでも変化の兆しがあったら薬剤の投与量を減らすなど、副作用の発現を未然に防ぐことが重要です。

 これまでに実際の臨床例で催不整脈作用に結び付く心電図のQT時間延長作用が報告された主な薬剤名をに示します。心臓に直接作用する抗不整脈薬でQT時間が延長するのは薬理作用からみて当然予測される範囲内で、医師のほうも十分に承知して注意深く経過を観察しますので、催不整脈の発現にまで至ることはほとんどありません。

 もちろん、不整脈を治療する目的で用いた薬剤によって、逆に不整脈が悪化することがあっては困りますから、処方する循環器専門医も十分に注意します。問題はそのほかの薬剤です。

 ここには主なもののみを挙げていますが、いずれも心臓病とは直接関係のない薬剤です。これらの薬剤は、それぞれの疾患の専門分野の先生方が処方することが多いもので、以前はまさか心電図に変化を起こし不整脈を誘発する可能性があるとは思わなかったのです。中には単独で用いてはまったく変化を来たさないのに、他の薬剤と併用すると相互作用によってはじめて心電図異常が起こるものもあります。

 ただしわが国においては、これらの情報はすべての医療機関に正確にかつ迅速に通知されるようになっていますので、心配し過ぎることはありませんが、もし担当医からこれらの薬剤を処方されたら、他の薬剤との飲み合わせが大丈夫かを含めて質問してみるとよいでしょう。


(2006年2月作成)

表  QT時間延長を来す可能性のある薬剤

抗不整脈薬

Ia群、Ic群、III群薬、ベプリジル

抗うつ薬・向精神薬

アミトリプチリン、イミプラミン、クロールプロマジン、フェノチアジン、ドロペリドール、ハロペリドール、リスペリドン、チオリダジン、フロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン

抗生物質・抗真菌薬

マクロライド系、ニューキノロン系、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、メトロニダゾール、ST合剤

抗ウイルス薬・抗がん剤

リトナビル、インジナビル、サキナビル、アマンタジン、フォスカルネット、タモキシフェン

免疫抑制剤

タクロリムス

高脂血症薬

プロブコール

抗アレルギー薬

テルフェナジン、アステミゾール

消化管運動改善薬

シサプリド

H2遮断薬

シメチジン、ラニチジン、ファモチジン

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