QT延長症候群において、QT値で運動の可否を判断できるか
私の息子(小6)の相談です。平成14年11月に小学校の心電図検査で異常の疑いがあり、病院で精密検査を受けました。
その結果、QT延長症候群と診断され、それまでやっていた部活(サッカー)を休部しました。体育はOKでした。
QT値:0.439(安静時)、0.542(軽運動時)、不整脈:なし
半年後、検査を受け、サッカーを再開しました。
QT値:0.44(安静時)、0.34(軽運動時)、不整脈:なし
今年6月に定期検査を受け、QT値が次のとおりとなりサッカーも体育の授業も休むよう言われました。
QT値:0.49(安静時)、0.45(軽運動時)、不整脈:なし
なお、本人には何の自覚症状もなく、学校の休み時間等にはドッチボールやサッカーをしたりして元気に遊んでいます。
そこで質問ですが、
1)現在のQT値では、体育の授業を普通に行うことは無理なのでしょうか?
2)現在、朝夕に「インデラル」と言う薬を飲んでいますが、QT値がよくなることはあるのでしょうか?
3)来年には中学生になります。今の薬を服用しながら通常の学校生活(体育も普通に行う)を過ごすことは可能でしょうか?
回答
まず、ご子息のQT延長症候群の診断ですが、遺伝子診断を含めて先天性(遺伝性)QT延長症候群との確定診断がなされているのでしょうか?
二次性のものが完全に否定されているのでしょうか?もし二次性であれば、その要因が除かれれば完全に治癒することになります。
先天性QT延長症候群だとした場合も、そのタイプによって治療方針が異なります。日本人に多いのはLQT1とLQT3ですが、両者でかなり治療法が違います。
先天性QT延長症候群の危険性は、QTの長さによって規定されるのではなく、Torsades depointesと呼ばれる不整脈が起こるかどうかで決まります。またこれらの不整脈は、運動時に起こるばかりでなく、睡眠中や情動時、夜間覚醒時などに発生する場合もあります。したがって、その予知はなかなか困難です。
以下、ご質問にお答えします。
1) QT値のみで運動の可否を判断することはできないと思います。
2)インデラルはLQT1で最も汎用される薬剤で、不整脈の発生を防止する作用があります。LQT3の場合はメキシレチンという薬剤を用いることもあります。
3)ホルター心電図など定期的なチェックをしながら経過を見るのが普通です。重症不整脈の危険性がある場合には植え込み型除細動器を装着することも考慮します。
いずれにしても、不整脈専門の施設で管理することが必要です。