ニッポンデータ研究とは?
三浦克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門教授)
ニッポンデータ(NIPPON DATA)をご存じですか。日本人を対象とした疫学研究で、心臓病や脳卒中に関する、さまざまなデータを提供しています。
2016年6月18日に、埼玉県さいたま市で第52回日本循環器病予防学会学術集会市民公開講座「食事で脳卒中・心臓病を撃退!」~ニッポンデータ全国2万人調査で分かった最新情報~が行われました。今回はそこからのレポート第1弾「ニッポンデータ研究とは」です。
●日本全国の国民2万人が対象の生活習慣病に関する調査、ニッポンデータ研究
厚生労働省は国民健康・栄養調査(毎年)、循環器疾患基礎調査(10年ごと)を実施していますが、ニッポンデータ(NIPPON DATA)研究はこれら厚生労働省が実施した調査の長期追跡研究です。この研究は全国の大学の研究者を中心とした厚生労働省研究班が実施しており、1980年の対象者約1万人(29年間追跡)、1990年対象者約8千人(25年間追跡)、2010年の対象者約3千人(追跡6年目)からなっています。
ニッポンデータ研究のような追跡研究は、疫学研究(コホート研究)とも呼ばれています。
追跡が長くなればなるほど、得られるデータから色々なことがわかるのです。
ニッポンデータ研究の調査地区には、全国から無作為で300地区が選ばれました(1980年、1990年、2010年それぞれ)。この300地区の対象者は、いわば日本国民の代表です。
2010年11月の国民健康・栄養調査と併せて行われたニッポンデータ研究を例にとると、全国300地区の223保健所の協力を得て実施されました。保健所から連絡を受けて地域の公民館などに出かけた対象者は、そこで研究の説明と同意取得、問診の実施、尿検査、心電図検査などが行われました。
●生活習慣病は最大の健康問題
脳卒中、心臓病、高血圧、糖尿病などは生活習慣病と呼ばれています。これら生活習慣病が注目されているのは、健康を脅かす大きな問題を抱えているからです。
脳卒中(年間死亡者約12万人)は、死亡に到らなくても手足に麻痺が残ったりすることで、重い介護状態になる最大の原因となっています。
心臓病(年間死亡者約19万人)は、そのうち半分が心筋梗塞で、増加傾向にあります。残りの大半は心不全です。
高血圧(患者数約4000万人)は、脳卒中や心臓病のもとになるため降圧薬による治療が必要となりますが、このために膨大な医療費が使われています。
糖尿病(患者数約900万人)は、肥満の増加とともに増加傾向となっています。糖尿病が長期にわたって放置されたり、コントロールが不十分な場合、腎臓に障害が起こり、時には透析が必要になることがあります。透析にも高額の医療費が使われています。腎障害予防や透析回避のためにも糖尿病の治療は重要です。
このように生活習慣病は最大の健康問題となっていることがおわかりいただけると思います。
生活習慣病の予防と治療は非常に重要な課題です。
●調査項目と将来の生活習慣病との関係を分析
ニッポンデータ研究の調査項目をご紹介します。
すでにご紹介したようにニッポンデータ研究は、国民健康・栄養調査と同時スタートなので、まず詳細な食事調査が行われます。この食事調査では、色々な栄養素摂取量(総カロリー、脂肪、蛋白質、食塩など)、色々な食品群摂取量(野菜、果物、魚、肉など)を調査します。飲酒量や喫煙習慣など嗜好品の習慣も調査します。身体活動・運動の習慣も調査します。社会的な要因(家族構成、経済的要因など)も調査します。肥満度、血圧、血糖値、コレステロール、心電図などの各種検査も行います。
これらの調査項目から得られたデータに基づき、将来の生活習慣病との関係が分析されます。得られた結果は、国民の生活習慣病の予防に活用されています。
ニッポンデータの結果は、
滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門のホームページ内で公開されていますので、ぜひご覧ください。
参考:
血管健康くらぶ「コラム」
2016.7.20掲載