意外に多い 心臓病が原因の脳梗塞
- FASTに気をつけて -
東京都済生会中央病院神経内科・脳卒中センター長 星野 晴彦
高齢者が多くなるに伴い、心房細動という不整脈が増えています。この心房細動が怖いのは、心房細動によって心臓の内部にできた血栓が脳の血管まで流れて、脳の血管を塞ぎ、心原性脳梗塞(脳卒中)を起こすことです。
心房細動があると、心房細動がない人より、3~5倍、脳梗塞になりやすくなります。また、心原性脳梗塞は、脳出血と同様、発症早期に亡くなる人が多く、とても危険な病気です。(脳出血の約15%、心原性脳梗塞の約13%が急性期に亡くなるというデータがあります)
心房細動からの脳梗塞は抗凝固薬を飲むことで、発症を3分の一に減らすことができます。脈の不整を感じたら心電図をとってもらうこと、心房細動と診断されたら抗凝固薬の内服の必要性を主治医とよく相談することが大切です。
もし脳梗塞を起こしたら、すぐ病院に行くことが重要です。脳梗塞は様々な症状で発症します。その中でも比較的はっきりしている脳梗塞の症状の目安は、「FAST」(ファスト)と呼ばれています。
F: 顔の表情がゆがむ(Face)口元が左右で下がり方が違うようなら危険
A: 片腕に力が入らない(Arm)両腕を前ならえにして、片方が下がるようなら危険
S: 言葉のろれつが回らない(Speech)会話がいつもと違うようなら危険
という症状が出たら、
T: すぐに(Time)救急車を呼びましょう、ということです。
(救急車を呼んだら、症状が出た時間を伝えます。)
脳梗塞の新しい画期的な治療法に血栓溶解療法(t-PA療法).があります。
詰まった血栓を溶かすt-PAという薬剤は、症状が出現してから4.5時間以内に投与する必要があります。
ですから、1分でも早く病院に行くことが重要なのです。
!! 一過性でも注意 !!
こうした症状が起きても、すぐに消えてしまう場合もあります。症状が出ているのは多くは1時間以内で、数分で消失してしまうことが多い状態です。
これは一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれるもので、脳梗塞を起こす前の危険なサインです。TIAがあった人の10~20%が3ヵ月以内に脳梗塞を起こし、さらにその半分の人は2日以内に発症するといわれています。
家族や身の回りの人の、FASTに気をつけましょう。
参考:国立循環器病研究センターホームページ
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/disease/stroke.html
東京都脳卒中の早期発見・早期治療と再発予防のためのポスターhttp://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/03/DATA/20k3pd00.pdf
2014.2.14掲載