生きる楽しみと命の危険
2014年06月16日 その他
生きる楽しみと命の危険
名古屋ハートセンター総長 外山淳治
私事で恐縮ながら、私の生きる楽しみの一つに山歩きがある。
この歳(満76歳)になっても「なぜ山に登るのか?」を自問自答しながら、今年も後期高齢者医療被保険証を財布に入れて常念岳(標高2,850m、長野県)、八甲田大岳(1,584m、青森県)と岩木山(1,625m、青森県)に登った。これで、北は利尻富士(1,721m、利尻島)、本州は富士山(3,776m)北岳(3192m、山梨県)穂高岳(3190m、長野県)間ノ岳(3189m、山梨県)槍ヶ岳(3180m、長野県)など、南は宮之浦岳(1936m、屋久島) にいたる日本百名山(深田久弥による)の半数以上に無事?登頂した事になる。老いた身に鞭うって命を懸けて攀じ登り続けている耳元での「もう限界だ、ここで諦めよう」の誘惑と「終わりの無い登りはない、あと十歩だけ山頂を目指して登ろう」の執念との葛藤を乗り越えて山頂を極めた達成感が私の「登山の楽しみ」であり「生きる楽しみ」を実感する瞬間である。
登山に限らず「生きる楽しみ」を享受するためには、大なり小なり「命の危険」をその代償として支払わねばならぬ。
厚労省人口動態調査(2011年度)での「浴槽内での溺死」が4550人と急増(3001人、2001年度)しており、その9割程度が65歳以上の高齢者であるところから、「入浴を楽しむ」ためだけでも高齢者(2900万人、2011年度)は「年間1万人当たり1.6人の死の危険」の代償を支払う覚悟の必要がある。
また全国の交通事故は年々大幅に減少しているにも拘らず高齢者の交通事故死(2500名、全体の50%)は下げ止まっており、「年間1万人当たり0.9人の死の危険」がある。これらの「死の危険」に加えて、窒息・転倒・転落による事故死などを加算した不慮の事故(年間約2万件)が発生する。したがって高齢者は「年間1万人当たり6.9人の死の危険」を支払って「日常生活を楽しむ」ことになる。
インターネットで検索した「長生き確率表:××歳になるまでの確率」http://tknottet.sakura.ne.jp/pension/LivingProb.php
から76歳男性の××歳まで生きる確率は、80歳で84%、90歳で31%である(図1棒グラフ参照)。すなわち、76歳男性の7割は90歳を迎えることなく死亡する。
その死亡の内訳は(図2円グラフ参照)、年間1万人当たりがんで160人、心疾患で55人、脳卒中で40人、肺炎で40人、不慮の事故で15人、その他(COPD,大動脈疾患、腎疾患、肝疾患、老衰など)100人である。
この生命表と死亡統計から76歳男性の「生きる楽しみ」を最大限に享受する戦略としては、
1)がん、循環器疾患(心疾患、脳卒中、腎疾患など)と肺疾患(肺炎、COPDなど)のに関わる生活習慣の改善努力(減塩、禁煙、節酒、運動、体重管理、食餌管理など)を自らおこなって、生活習慣病による死亡の半減を目指すことが最も重要であり、
2)その努力で得た余命を生活習慣病による死の危険に較べて遥かに低い(20分の1)不慮の事故による危険には目をつぶって、旅行・入浴・食餌などの趣味で大いに「生きる楽しみ」を享受したいものである。
英国文豪サマセットモームの皮肉たっぷりの「世の中で騙され易いのは、女性の涙、新聞記事と各種統計の数値であるが、人の死が100%である事だけ確かである」との言葉を引用するまでも無く、上記の統計数値とそれを基にした「生きる楽しみと命の危険」に関わる小生の戦略も机上の空論となるか否かをこの目で確かめたいが、所詮は果たせぬ夢に終わるであろう。
この歳(満76歳)になっても「なぜ山に登るのか?」を自問自答しながら、今年も後期高齢者医療被保険証を財布に入れて常念岳(標高2,850m、長野県)、八甲田大岳(1,584m、青森県)と岩木山(1,625m、青森県)に登った。これで、北は利尻富士(1,721m、利尻島)、本州は富士山(3,776m)北岳(3192m、山梨県)穂高岳(3190m、長野県)間ノ岳(3189m、山梨県)槍ヶ岳(3180m、長野県)など、南は宮之浦岳(1936m、屋久島) にいたる日本百名山(深田久弥による)の半数以上に無事?登頂した事になる。老いた身に鞭うって命を懸けて攀じ登り続けている耳元での「もう限界だ、ここで諦めよう」の誘惑と「終わりの無い登りはない、あと十歩だけ山頂を目指して登ろう」の執念との葛藤を乗り越えて山頂を極めた達成感が私の「登山の楽しみ」であり「生きる楽しみ」を実感する瞬間である。
登山に限らず「生きる楽しみ」を享受するためには、大なり小なり「命の危険」をその代償として支払わねばならぬ。
厚労省人口動態調査(2011年度)での「浴槽内での溺死」が4550人と急増(3001人、2001年度)しており、その9割程度が65歳以上の高齢者であるところから、「入浴を楽しむ」ためだけでも高齢者(2900万人、2011年度)は「年間1万人当たり1.6人の死の危険」の代償を支払う覚悟の必要がある。
また全国の交通事故は年々大幅に減少しているにも拘らず高齢者の交通事故死(2500名、全体の50%)は下げ止まっており、「年間1万人当たり0.9人の死の危険」がある。これらの「死の危険」に加えて、窒息・転倒・転落による事故死などを加算した不慮の事故(年間約2万件)が発生する。したがって高齢者は「年間1万人当たり6.9人の死の危険」を支払って「日常生活を楽しむ」ことになる。
インターネットで検索した「長生き確率表:××歳になるまでの確率」http://tknottet.sakura.ne.jp/pension/LivingProb.php
から76歳男性の××歳まで生きる確率は、80歳で84%、90歳で31%である(図1棒グラフ参照)。すなわち、76歳男性の7割は90歳を迎えることなく死亡する。
その死亡の内訳は(図2円グラフ参照)、年間1万人当たりがんで160人、心疾患で55人、脳卒中で40人、肺炎で40人、不慮の事故で15人、その他(COPD,大動脈疾患、腎疾患、肝疾患、老衰など)100人である。
この生命表と死亡統計から76歳男性の「生きる楽しみ」を最大限に享受する戦略としては、
1)がん、循環器疾患(心疾患、脳卒中、腎疾患など)と肺疾患(肺炎、COPDなど)のに関わる生活習慣の改善努力(減塩、禁煙、節酒、運動、体重管理、食餌管理など)を自らおこなって、生活習慣病による死亡の半減を目指すことが最も重要であり、
2)その努力で得た余命を生活習慣病による死の危険に較べて遥かに低い(20分の1)不慮の事故による危険には目をつぶって、旅行・入浴・食餌などの趣味で大いに「生きる楽しみ」を享受したいものである。
英国文豪サマセットモームの皮肉たっぷりの「世の中で騙され易いのは、女性の涙、新聞記事と各種統計の数値であるが、人の死が100%である事だけ確かである」との言葉を引用するまでも無く、上記の統計数値とそれを基にした「生きる楽しみと命の危険」に関わる小生の戦略も机上の空論となるか否かをこの目で確かめたいが、所詮は果たせぬ夢に終わるであろう。
愛知県病院協会会報(第251号、平成25年11月発行)より
2014.6.16掲載
2014.6.16掲載