日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > その他に関するQ >検査や治療を必要とする低血圧とはどういうものですか
その他 Question 1
□低血圧とは、収縮期血圧が100mmHg未満の場合である。低血圧の分類は①急性低血圧②慢性低血圧③起立性低血圧に分けられる。
□①急性低血圧にはショック、一過性低血圧(起立性低血圧、食後低血圧、排尿後低血圧、透析後低血圧)、②慢性低血圧は本態性低血圧、症候性低血圧、体質性低血圧に分けられる。本態性低血圧とは原因不明の低血圧による症状を認めるもので、症候性低血圧とは低血圧をおこす原因疾患があり、体質性低血圧とは血圧は低いが無症状で病的意義がなく通常の生活を送っている場合を示す。
□低血圧の症状はめまい、ふらつき、立ちくらみの代表的なものから倦怠感、易疲労感、なんとなく元気が出ない、眠気、手足の冷感など多様である。また、血圧低下が高度であれば失神発作、一過性脳虚血発作(TIA)をきたすことがある。
□検査や治療を必要とする低血圧で重要な病態はショックである。心原性ショックは収縮期血圧が90mmHg未満、もしくは通常血圧より30mmHg以上の低下と定義されている。また、非心原性ショックは普段の血圧が150mmHg以上の時は収縮期血圧が60mmHg以上の低下、110mmHg以下の時は収縮期血圧が20mmHg以上の低下と定義されている。(図)
図 ショック
□数値だけを考えれば若い女性で血圧が80mmHg台でも無症状の人はいる。血圧値ではショックになるが無症状なので、この症例は体質性低血圧と考え経過観察とする。また、80歳男性の収縮期血圧が170mmHgのため高血圧の診断で降圧剤の服薬を始めた。数カ月経過した時点で収縮期血圧が110mmHgと低くなっていたが記憶力も悪くなり降圧剤を減量し、収縮期血圧が140mmHgに回復するとともに記憶力も回復した。この症例は定義上は非心原性ショックに当てはまるが、降圧剤による過度の降圧(低血圧)と考える。
□つまり、検査や治療を必要とする低血圧は症状の有無が重要である。ショックの5徴:①pallor(蒼白)②Prostration(虚脱;身体的・精神的)③Perspiration(冷汗)④Pulselessness(脈拍触知不良)⑤Pulmonary deficiency(呼吸不全)を伴っていれば迅速な治療・検査が必要である。一過性低血圧もめまい、ふらつき、立ちくらみの症状を認め血圧低下が高度となれば失神発作も来たすが、一過性低血圧は病歴聴取をしっかりすれば診断ができる。
□低血圧をきたす主な疾患を表に示す。心血管系、呼吸器疾患は聴診、画像(レントゲン、エコー)、心電図などで診断は容易である。内分泌疾患は身体所見が重要となる。それぞれの疾患に関しては他の成書を参考にしてください。最後に、今後さらなる高齢化社会が進むなか高齢者に特に注意が必要な循環血液量減少(脱水、利尿剤)、多疾患患者が多くなり内服薬の増加・相互作用による低血圧も注意すべきである。
表 低血圧をきたす疾患
心血管系 | 心筋梗塞、心不全、大動脈弁狭窄症、閉塞性肥大型心筋症、心タンポナーデ、重症不整脈など |
呼吸器疾患 | 肺梗塞、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾(COPD) |
内分泌疾患 | 甲状腺機能低下症、Addison病、下垂体疾患 |
神経疾患 | 頸動脈洞過敏症、過換気症候群、舌咽神経痛 |
薬物性 | 降圧薬、利尿薬、抗うつ薬、抗不安薬、向精神薬、抗Parkinson薬、麻酔薬、アルコール |
起立性低血圧 | Shy-Drager症候群、Parkinson症候群、Guillan-Barre症候群、糖尿病性神経症など |
その他 | 循環血液量の減少(脱水、出血、透析など) |
(2014年10月公開)
回答:佐川 俊世
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