日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 高血圧に関するQ >サイアザイドとカルシウム拮抗薬を含む配合剤はどういう患者さんに向いていますか
高血圧 Question 14
□高血圧患者に降圧薬治療を行う場合、単剤で目標血圧が達成できるのは1/3程度で、多くの症例では2剤以上を併用する必要があるため、どの降圧薬を組み合わせるかを考える必要があります。
□日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン(JSH2014)では、積極的な適応の有無にかかわらず用いられる第一選択薬として、利尿薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、ACE阻害薬、ARBがあげられており、これらを併用する場合には、作用機序が重複するACE阻害薬とARBの併用を除く5通りの組み合わせが勧められています。
□降圧薬の適応や組み合わせを考える場合には、降圧薬の作用機序を理解し高血圧の病態に合った併用を行うことが効果的です。図に高血圧の発症・進展に関与する様々な因子の関係と各種の降圧薬の作用部位を示しますが、これらの中で腎臓におけるNa排泄障害と末梢血管抵抗の増加が主要な位置を占めており、多くの要因はこの2つの主要な成因を介し血圧の上昇に寄与しています。
図 高血圧の成因、病態に寄与する様々な因子の関係と各種の降圧薬の作用点
□この図の中で、利尿薬はNa排泄の促進し、Ca拮抗薬は血管平滑筋を弛緩して血管抵抗を減少させることが作用機序であり、高血圧の2大主要成因を直接的に改善する効果的な組み合わせであると考えられます。
□Ca拮抗薬の血管拡張作用は内因性の交感神経活動やレニン-アンジオテンシン(RA)系の影響を受けにくく、腎血管の拡張によりNa排泄作用を示します。したがって、サイアザイド利尿薬とCa拮抗薬の組み合わせは、わが国で増加しつつある高齢者で食塩摂取量が多く交感神経系やRA系が抑制されているような症例において降圧効果が高く、脳卒中などの心血管イベント抑制効果が優れていることが示されています。
□既に、ARBとサイアザイド利尿薬の配合剤が多く用いられていますが、高齢者で夏季に水分摂取が十分でない場合に脱水を起こす症例があることに注意が必要です。これには、脱水に対し防御機転となるRA系が抑制されていることが関係し、Ca拮抗薬とサイアザイド利尿薬の併用では脱水を起こすリスクがより少ないと思われます。
□Ca拮抗薬の問題点は、頻脈,顔面紅潮,浮腫などですが、浮腫の発現は利尿薬の併用により軽減されます。一方、サイアザイド利尿薬の問題点は、低K血症,高尿酸血症,糖・脂質代謝異常などですが、長期的に血糖や血清脂質のコントロールが問題になることは少なく、Ca拮抗薬は腎血流を増加させ尿酸排泄を促進します。
□したがって、サイアザイド利尿薬とCa拮抗薬の併用に際しても、反射性の頻脈や低K血症には注意が必要です。特にサイアザイド利尿薬は副作用を防ぐために少量を用い、降圧効果の調節はCa拮抗薬の投与用量増減により行うことが勧められます。
(2014年10月公開)
回答:石光 俊彦
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