日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 高血圧に関するQ >ラシックスは高血圧の治療には使わないのですか
高血圧 Question 13
□低用量のサイアザイド系利尿薬は、主に高齢者や食塩感受性高血圧、治療抵抗性高血圧などに対する降圧薬として一般に汎用されています。一方、主として心不全患者に対して使用されるループ系利尿薬、ラシックスの降圧薬としての適性を考えてみたいと思います。
□サイアザイド系利尿薬は、遠位尿細管においてNa+とCl-の再吸収を抑制することで降圧効果をもたらします。一般に、経口投薬されたサイアザイド系利尿薬は、消化管から吸収され、1~2時間で利尿作用を発揮し、作用は約16~24時間持続します。
□一方、ループ系利尿薬のラシックスは、ヘンレ係蹄上行脚においてNa+/K+/2Cl-の共輸送を抑制することで、サイアザイド系利尿剤より強力な利尿作用をもたらします。しかし、ラシックスの作用時間は4~5時間と短く、持続的な利尿作用を期待する場合は、複数回の投薬が必要となります。Naの尿中への喪失は投薬後早期に出現しますが、作用持続時間が短いために、Naの総喪失量はサイアザイドよりもむしろ軽度です。このため仮に、降圧薬として使用するとしても、一日2回の投薬が必要となります。
□ただ、利尿剤による急激なNaの喪失は、反応性に腎臓でのレニンの産生を促し、結果としてアンジオテンシンⅡによる血管の収縮をもたらします。このため、降圧薬として利尿剤を使用する場合は、ACE阻害薬あるいはARBやβ遮断薬との併用が理論的に推奨されています。
□サイアザイド系利尿薬の欠点としては、用量増加による累積効果が期待できず、腎機能障害では効果が発揮されにくいことが挙げられます。ラシックスは、所謂“天井が高い”薬剤で、重症心不全に対して用量依存性に利尿効果の増大が期待できます。また腎機能障害による乏尿に対しても、用量を増加させることで一定の効果を得ることが出来る利点を有しています。
□結局、降圧薬としての利便性を考慮した場合、1日1回の服薬で持続的な降圧効果を発揮し、QOLを阻害する頻回の排尿現象をできるだけ抑えるために、少量サイアザイド系利尿薬の使用がラシックスより優れていると言えます。
□降圧薬に利尿剤を使用するに当たっては、脂質や糖代謝異常、カリウムやマグネシウムの低下、尿酸値の上昇、夏場の脱水などに十分に配慮する必要があります。
(2014年10月公開)
回答:木村 謙介
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