日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 高血圧に関するQ >どういうときに患者さんで二次性高血圧を疑えばいいですか
高血圧 Question 9
□二次性高血圧が今まで考えられていたよりも多いという背景を考慮すると、全例で二次性を念頭に診療にあたるのが無難だと思います。症状や背景ごとに以下疑われる病態を述べます。
■薬剤関連
□高血圧に限りませんが、まずは薬剤性を否定します。消炎鎮痛薬のNSAIDsには血圧上昇効果があります。また一部の降圧薬 (β遮断薬、ACE阻害薬、ARBや利尿薬)の効果を減弱させます。漢方薬に含まれる甘草や肝庇護目的で使われるグリチルリチンは、偽性アルドステロン症による血圧上昇をきたす可能性があります。
□慢性腎臓病に伴う貧血で使用するエリスロポエチン製剤、免疫抑制剤のシクロスポリン、経口避妊薬やホルモン補充療法薬として使用されるエストロゲン製剤や、抗うつ薬などの交感神経刺激作用を有する薬物でも高血圧は起こりえます。これらの薬剤を使用している場合、また薬剤抵抗性高血圧や低カリウム血症が背景にある場合は特に考慮する必要があります。
■腎臓
□腎機能低下、腎疾患既往があれば腎実質性を、若年発症、ACE阻害薬またはARB開始後の腎障害、急激な血圧上昇、腹部血管雑音、低カリウム血症、腎サイズの左右差などがあれば腎血管性が疑われます。
■内分泌
□「低カリウム血症を合併する高血圧症では原発性アルドステロン症を疑う」といわれますが、約3/4でカリウム値正常との報告(Gordon RD., J Endocrinol Invest 1995)もあり、カリウムが低下していなくても原発性アルドステロン症を否定できません。中心性肥満、満月様顔貌、皮膚線条や糖尿病合併例ではクッシング症候群、動悸、頭痛、発汗などを伴えば褐色細胞腫の可能性があります。
□浮腫、活動性低下、脂質異常症合併、CPK上昇や徐脈があれば甲状腺機能低下症、手の震え、発汗、体重減少や頻脈などがあれば甲状腺機能亢進症を念頭におきます。四肢末端肥大、顔貌変化などがあれば先端巨大症、高カルシウム血症があれば副甲状腺機能亢進症も可能性がありますが稀です。
■その他
□日中の眠気やいびき、肥満や睡眠薬内服などの背景があれば睡眠時無呼吸症候群を疑います。脳腫瘍による頭蓋内圧亢進も高血圧をきたしますが稀です。血圧の左右差、上下肢差があれば血管炎症候群や大動脈縮窄、収縮期高血圧ならば心拍出量増加を伴う大動脈弁閉鎖不全、動脈管開存や動静脈瘻などもあります。他に妊娠誘発性高血圧症もあります。
(2014年10月公開)
回答:高部 智哲
検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。
検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。