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高血圧 Question 6

高血圧の治療にはα遮断薬は使わなくなったのですか

α1遮断薬は、ALLHAT試験で利尿薬群に比し心不全発症が約 2 倍に増えたことから早期中止となり、その後はほとんどの高血圧治療ガイドラインの第 1 選択から外されました。したがって、高血圧のプライマリーケアの場面でα1遮断薬が使用されることは少なくなりました。

JSH2014における、積極的適応がない場合の高血圧治療の基本的考えとして、A(ACE阻害薬/ARB)、C(Ca拮抗薬)、D(サイアザイド系利尿薬/サイアザイド類似利尿薬)のいずれかを第 1 選択としました()。これで良好な血圧コントロールが得られなければ、A、C、Dの2つを組み合わせ、それでだめなら3つ全部を投与するとしました。

図 積極的適応がない場合の高血圧治療の進め方(高血圧治療ガイドライン2014)
原田図.jpg
 

A+C+Dの3剤で良好な血圧コントロールが得られなければ、“治療抵抗性高血圧”と呼び、4段階めとしてβ遮断薬、α1遮断薬、アルドステロン拮抗薬、他の種類の降圧薬などを併用すること、専門医に相談することが推奨されました。

α1遮断薬は、初回投与現象(first dose phenomenon)として起立性低血圧によるめまい、動悸、失神があります。しかし、少量より開始し漸増すれば、他の降圧薬とも併用しやすい降圧薬です。

4段階めの治療抵抗性高血圧に使うことから、なんとなく専門医が使う薬といったイメージが強いのですが、肥満やメタボリックシンドロームを合併した高血圧に有効であると考えられています。 
 肥満やメタボリックシンドロームは高インスリン血症や高レプチン血症、交感神経緊張と関係する病態とされていますが、α1遮断薬はインスリン感受性を改善し脂質代謝を改善します。

また、家庭血圧測定や24時間血圧測定により診断される早朝高血圧は心血管疾患リスクになりますが、α1遮断薬の眠前投与がこれに有効であるとされています。しかし、肥満やメタボリックシンドローム、早朝高血圧に関して、α1遮断薬投与がリスクを低下するかどうかについては、残念ながらはっきりとしたエビデンスはありません。

α1遮断薬を使用する疾患は二次性高血圧の代表的疾患である褐色細胞腫です。頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白などの症状が発作性の高血圧を伴う時にこれを疑います。
 褐色細胞腫にβ遮断薬を単独で用いるとα受容体を介した血管収縮により血圧上昇を引き起こすため禁忌とされており、必ず十分量のα遮断薬と併用することが必要です。
褐色細胞腫クリーゼには非選択的α遮断薬フェントラミンの静注と選択的α1遮断薬ドキサゾシンの内服を使用します。

降圧が心血管疾患リスク低下において最も大切であることから、ALLHAT試験の結果だけでα1遮断薬を否定する必要はないと考えられます。しかし、代謝や血圧の日内変動に対する良い効果にもかかわらず、α1遮断薬がリスク低下に有効であるというエビデンスがないことから第 1 選択薬として使用しないことになりました。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

α遮断薬は4段階めに使う降圧薬であるが、治療抵抗性高血圧や早朝高血圧、褐色細胞腫において使われる。

回答:原田 和昌

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