日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 高血圧に関するQ >レニン・アンジオテンシン系が多くの臓器障害に関わっていると聞きましたが、その根本にあるレニンそのものをブロックする治療薬はあるのですか
高血圧 Question 2
□直接的レニン阻害薬として、アリスキレンが唯一降圧薬として使用されています。レニン・アンジオテンシン(RAA)系に作用する薬剤としては、すでにアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)があり、いずれも降圧薬としては第一選択薬として汎用され、大規模臨床試験ではそれらの臓器保護効果が証明されています。
□しかし、ACE阻害薬はキマーゼや非ACE経由由来のアンジオテンシンⅡ(AngⅡ)の産生は阻害せず、またARBはAngⅡのアンジオテンシンⅡ受容体サブタイプ1(AT1)への作用は遮断しますが、AngⅡは増加させます。このため、これらの薬剤はRAA系を十分には抑制できず、腎臓からのレニン分泌を抑制するネガティブフィードバックが減弱するため、代償的にレニン濃度やレニン活性が上昇してしまいます。
□アリスキレンはレニンの活性部位に特異的に結合することによりレニン活性を直接的に阻害し、アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠへの変換を阻害することで降圧効果をもたらします。
□ヒトにおけるアリスキレンの血中半減期は約40時間であり、ほとんど体内で代謝を受けず、投与量の90%以上が糞中に排泄されます。このため、1日1回投与で24時間以上の安定した降圧効果を示します。投与開始後2週間で最大降圧効果の80~90%が得られ、4~6週間後に最大効果に達し、1年間の長期投与において安定した降圧効果が維持されることが示されています。また、カルシウム拮抗薬や利尿薬との併用により降圧効果の増強がみられます。しかしながら、どのような病態に対して使用するのが適切であるかについてはエビデンスが乏しくいまだ良く分かっていません。
□ALTITUDE試験は、アリスキレン追加投与の有効性を検討した試験ですが、腎機能障害を伴う2型糖尿病患者を対象として、ACE阻害薬またはARBを含む標準的な治療を行ったうえで、アリスキレンを追加投与した群とプラセボ群に無作為に割り付け検討されました。この試験において、アリスキレン追加投与群で心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中などの主要複合エンドポイントの減少はみられませんでしたが、高カリウム血症、低血圧などの有害事象の発症率が増加したため、途中で試験は中止されました。
□この成績を受けて、わが国ではACE阻害薬またはARB投与中の糖尿病患者に対するアリスキレン投与は禁忌となりました(ただし、ACE阻害薬またはARB投与を含む他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)。
□バイオマーカーを指標とした小規模臨床試験では、従来のRA系抑制薬によって治療中の心不全患者にアリスキレンを追加投与した結果、BNPや尿中アルドステロンの低下がみられたとするALOFT試験などが報告されています。今後、アリスキレンと他のRA系抑制薬を直接比較した大規模臨床試験の結果などにより、同薬の臨床使用における位置づけをはっきりさせることが望まれます。
(2014年10月公開)
回答:木村 謙介
検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。
検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。