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診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

高血圧 Question 1

レニン・アンジオテンシン系の話題はよく耳にしますが、その中のひとつアルドステロンという物質はどのような作用を持っているのですか

アルドステロンは副腎皮質から分泌されます。
ステロイドホルモンのひとつ。腎の尿細管に作用して、
 ● ナトリウムの再吸収、
 ● 水分の保持、
 ● カリウムや水素イオンの排出
などの仕事をしています。

陸上生物にとって、体内に水分を保持すること、ナトリウムやカリウムなどの電解質の適正な濃度を保つことは、生命の維持に不可欠な機能です。我々人類も、長い進化の歴史を経てアルドステロンを含む水分や電解質の調節システムを確立してきました。

ところが、この100?200年、人類を取り巻く環境が急速に変化しました。飽食、肥満、塩分過剰摂取のことです。この新たな環境で、アルドステロンを含む水分や電解質の調節システムが、かえって健康を害する作用を及ぼすようになっています。
もっとも問題になるのは、ナトリウムや水分過剰による血圧上昇。

副腎腫瘍などからアルドステロンが過剰に分泌される病気があります。原発性アルドステロン症のことです。
原発性アルドステロン症のことを調べて行くうちに、過剰なアルドステロンがどうして害をもたらすか多くのことがわかってきました。

高血圧や動脈硬化を介するものや、アルドステロンの直接作用による虚血性心疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患、さらには心肥大、心不全、腎機能障害など多くの有害作用が報告されています()。

 表 アルドステロンの有害作用

高血圧:水・ナトリウム貯留、血管内皮機能低下などを介して
動脈硬化:高血圧を介して、アルドステロンの直接作用で
虚血性心疾患:高血圧や動脈硬化を介して
大動脈疾患:高血圧や動脈硬化を介して
末梢動脈疾患:高血圧や動脈硬化を介して
左室肥大:高血圧を介して、アルドステロンが直接心筋肥大や線維化を促進することで
腎機能低下:高血圧を介して、アルドステロンが子球体を直接障害することで

こうした事情から、高血圧治療薬として、アルドステロンの作用を抑制する薬剤が開発されました。アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、直接的レニン阻害薬、アルドステロン拮抗薬のことです。

ところで、食事や水分がとれなくなった高齢者が倦怠感、脱力感、無力感で来院され、脱水と低ナトリウムを補液で補正すると元気になることを経験します。アルドステロンは、電解質や水の調節に励んで、こういう事態ができるだけ起きないように働いています。有害性が話題になっているアルドステロンですが、体内に存在する物質や仕組みですから、ちゃんと重要な任務を与えられています。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

多くの高血圧治療薬はアルドステロンの作用を抑制する。

回答:青柳 昭彦

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