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心不全 Question 16

高カルシウム血症に出会ったときに考えるべきことはなんですか

血清カルシウム濃度が10.4mg/dl以上を高カルシウム血症(高Ca血症)といいます。原因の90%以上は、原発性副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍です。その他稀なものとして、ビタミンD中毒、ミルク-アルカリ症候群、極度の不動などがありますが、特に循環器疾患に関連した原因として気にかけなくてはならないものがサルコイドーシスとサイアザイド系利尿薬ではないでしょうか。

サルコイドーシスは、原因不明の全身性、多臓器性の肉芽腫性疾患であり、組織学的には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が特徴的です。日本サルコイドーシス学会/肉芽腫性疾患学会から2006年に公表された「サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き-2006」では全身反応を示す重要な検査所見として、血清ACE活性高値などとともに「血清あるいは尿中Ca高値」がはっきりと示されています。これは類上皮細胞肉芽腫において活性ビタミンDである1.25-ジヒドロキシコレカルシフェロールが産生されることにより起こるとされています。ただ、日本人のサルコイドーシスでは高Ca血症や高Ca尿症の頻度は低いともいわれています。

サイアザイド系利尿薬は、遠位尿細管におけるNa+とCl-の再吸収を抑制する利尿薬です。遠位尿細管細胞の管腔側膜にあるNa+・Cl-共輸送体を抑制することによりNa+とCl-の再吸収を減少させ利尿効果を発現しますが、それとともにCa2+の再吸収を促進する作用もあります。

Na+の再吸収が減る(=尿細管腔側から遠位尿細管細胞へのNa+流入が低下する)と遠位尿細管細胞の基底膜側のNa+・Ca2+逆輸送体が活性化され細胞内にNa+が流入するとともにCa2+が組織間質や血液へ移行します。その結果、遠位尿細管細胞の管腔側膜にあるCa2+チャネルを介して流入するCa2+が増加しCa2+再吸収が促進されるため高Ca血症がみられることがあります。

これに関連した事例として高齢者の高血圧治療において、高齢者高血圧を対象としてサイアザイド系類似利尿薬を使用した臨床研究(HYVET)でプラセボ群と比較して有意な骨折発症減少を認めたことから、骨粗鬆症を伴う場合はサイアザイド系利尿薬の使用が推奨されています(高血圧ガイドライン2014より)。

なお、国内で使用できるサイアザイド系(サイアザイド系類似)利尿薬としてはヒドロクロロチアジド(主にARBとの配合剤として)、トリクロルメチアジド(有名なフルイトラン)、ベンジルヒドロクロロチアジド(ベハイド)、インダパミド、トリパミド、メフルシドとそれらの後発品です。これらの薬を使用していたら、時には血清Ca濃度を測定してみては如何でしょうか。

参考資料
・ワシントン マニュアル第9版
・文光堂 内科学
・サルコイドーシスの診断基準と診断の手引き-2006要約
・サルコイドーシス診療Q&A集 
  厚生労働科学研究 難治性疾患克服研究事業
びまん性肺疾患に関する調査研究班 発行
・高血圧ガイドライン2014
・南江堂 シンプル薬理学 改訂第4版
・南江堂 今日の治療薬2014

Only One Message

今回の原稿依頼でCaに関する種々の資料を調べ『Ca代謝異常』の奥深さを再認識しました。サイアザイド系利尿薬と高Ca血症…私自身も早速測定し始めました。

回答:有川 拓男

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