日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 心不全に関するQ >高カリウム血症を認めたときに考慮すべきことはなんですか
心不全 Question 15
□緊急対応が必要な場合は当てはまりませんが、本当に上昇しているのかどうか判断します。上昇が間違いないなら系統別に原因を考えます。頻度の高い原因を優先的に検査し、必要あればその他の可能性も考慮します。
*徐脈、房室ブロック、wide QRSやテント状T波などがみられたら、循環管理やカリウムを下げるなどの緊急処置を先に行います。その場合は落ち着いてから原因検索を開始します。
■局所的な上昇=偽性上昇
□検体が適切に採取されていたかどうか確認します。静脈ライン側の場合は、輸液中のカリウムが原因となっているかもしれません。患者さんがこぶしを強くにぎりすぎたり何度も手を握ったりすると、前腕の筋肉由来のカリウムが局所的に増加することがあります。
□静脈穿刺時の機械的溶血や、採血スピッツを振りすぎておこった溶血も考慮します。著明な血球上昇があれば、採血管内で血液が凝固して血球内からカリウムが漏出することがあります。採血後に長時間放置した場合も細胞内からカリウムが移動します。
■カリウム排泄低下
□利尿薬により腎血流低下や腎機能低下が原因となっている可能性があります。他に副腎不全や尿細管性アシドーシス (IV型)による低レニン性低アルドステロン血症などもあります。ヘパリンを使用している場合は、アルドステロン抑制効果で排泄低下がおこりえます。
□薬剤による直接のカリウム排泄抑制効果も可能性があり、例えばカリウム保持性利尿薬、ACE阻害薬やARB、NSAIDsや一部の抗菌薬 (ST合剤)などがこれに当たります。
■細胞内のカリウムがシフトした場合
□溶血は赤血球から、横紋筋融解や熱傷は筋細胞から、特にアニオンギャップが正常な急性の代謝性アシドーシスでは、水素イオンと交代で細胞外にカリウムがでてきます。インスリン枯渇による高血糖でも、血漿浸透圧上昇による細胞外へのカリウム流出が起こります。
□代謝性アシドーシスの原因としては、下痢や腸瘻増設後による消化管からのHCO3-イオン喪失、もしくは尿細管性アシドーシスなどによる腎臓からのHCO3-喪失などがあります。ジギタリス製剤ではNa/K-ATPase阻害作用のために細胞外のカリウム濃度が高くなることがあります。周期性四肢麻痺の中でも高カリウム性のものは、細胞内からシフトすることで血液中のカリウム濃度が上昇することがあります。
■カリウム摂取過剰
□何かの理由で低カリウム血症があり経口もしくは点滴でカリウムを補充している場合は、摂取過剰、また排泄低下を合併して高カリウム血症を起こす可能性があります。腎機能が低下している方が健康志向で生野菜を習慣的に摂取することがありますが、これも原因となりうるため注意が必要です。
回答:高部 智哲
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