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心不全 Question 12

息切れのある慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者によく使われる治療薬は何ですか

まず「COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)」について説明します。この病気は長期間の有害物質の吸入によって起こる気道の慢性炎症性疾患です。呼吸機能検査で可逆性の乏しい閉塞性障害があり、徐々に生じる息切れが特徴的な症状です。

有害物質といってもほとんどは喫煙が原因で、タバコ病とも言われています。40歳以上の日本人の有病率は8.6%で、かなりありふれた病気です。

「喘息」も同じく気道の慢性炎症性疾患ですが、こちらはアレルギーが原因であり、閉塞性障害も症状も可逆的であり、別の疾患です。

昔は「肺気腫」と「慢性気管支炎」の2疾患を総称してCOPDと呼んでいた時代もありましたが、今ではCOPDは独立した疾患なのでご注意ください()。3疾患とも主に喫煙が原因で、お互いよく合併するので紛らわしいかもしれません。

図 COPDの概念
永田図COPD.jpg

肺気腫は肺胞が破壊される病気であり、CTなどの画像検査によって肺の形態異常を確認することで診断します。慢性気管支炎は気道分泌物が増える病気であり、「痰が年に3か月以上あり、それが2年以上連続する」という症状だけで診断します。一方、COPDは気流閉塞をきたす病気であり、呼吸機能検査によって閉塞性障害を確認することで診断します。つまり3者はそれぞれ別の観点からつけられた病名です。したがって、肺気腫や慢性気管支炎があっても閉塞性障害がなければCOPDではないし、肺気腫と慢性気管支炎のどちらも合併しないCOPDもよくあります。

さてそのCOPDの治療ですが、壊れた気道を元には戻せないものの、自覚症状の軽減、増悪の予防、生命予後の改善は期待できます。COPDの程度によらず、禁煙とインフルエンザワクチンは予後を改善しますし、低酸素血症がある場合は酸素療法も予後を改善します。

薬物治療としては、主に息切れに対して対症的に気管支拡張薬を使います。その他、増悪に対しては経口ステロイド薬を、増悪を繰り返す症例では増悪予防のために吸入ステロイド薬を使います。ここでは、息切れのあるCOPD患者によく使われる薬ということで、気管支拡張薬について具体的に解説します。

気管支拡張薬は重症度に応じて選ぶのが原則です。軽症のうちは苦しい時だけ短時間作用薬を使い、より重症になると定期的に長時間作用薬を使います。長時間作用薬が1剤で不充分なら2剤に、それでも不充分なら3剤にと併用薬を増やします。

短時間作用性の気管支拡張薬としては、①吸入β2刺激薬(商品名メプチンなど)、②吸入抗コリン薬(商品名テルシガンなど)があります。①のほうが即効性に優れるので、優先度は①≧②です。

長時間作用性の気管支拡張薬としては、③吸入抗コリン薬(商品名スピリーバなど)、④吸入β2刺激薬(商品名セレベントなど)、⑤経口徐放性テオフィリン薬(商品名テオドールなど)、⑥貼付β2刺激薬(商品名ホクナリンなど)があります。吸入薬は局所投与されるため、効果が高く全身性の副作用が少ない点で優れています。したがって③と④が最優先です。

□国際的なガイドラインでは⑤が3番手です。⑥は国際的には推奨されていませんが、日本や韓国では使われることがあります。特に吸入の困難な患者には④の代用品として便利です。日本での優先度は、③≒④≫⑤≒⑥といったところでしょうか。③と④では優劣つけ難いので、合併症に応じて使い慣れた薬を選びます。

□前立腺肥大や緑内障があれば③は禁忌です。頻脈性の心疾患があれば④は躊躇します。④と⑥は同じβ2刺激薬なので併用不可ですが、その他の組み合わせは併用可能です。③と④を併用する場合には合剤の吸入薬(商品名ウルティブロ)もあります。増悪の予防に吸入ステロイド薬が必要な場合には、④とステロイドの合剤(商品名アドエア、シムビコートなど)がよく使われます。

Only One Message

COPDは根治できないが、症状は緩和できる。息切れには、重症度や合併症に応じた気管支拡張薬を使う。

回答:永田 泰自

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