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不整脈 Question 27

糖尿病の患者さんは心拍数が高くなると聞きました。その理由と、対処を教えてください

心拍数は自律神経系により調節されています。自律神経系はヒトの恒常性を維持する役割を担っています。ヒトの状態が変われば自律神経の状態も変化し、その時点のヒトの恒常性を維持するように自律神経系は働きます。

心拍数に対する自律神経系は、交感神経と迷走神経(副交感神経)です。自律神経系は相反的に作用します。交感神経系が優位になれば心拍数は上昇し、迷走神経が優位になれば心拍数は低下します。生体の状況に応じて心拍数は自律神経系により自動調節されています。

糖尿病は自律神経障害を合併することがあります。自律神経障害を合併すると心拍数を調節する働きが低下します。自律神経障害を合併していない糖尿病患者さんでは心拍数の調節障害はありません。ヒトの安静時の心拍数は主に迷走神経により調節されています。糖尿病の自律神経障害により迷走神経による安静時心拍数の調節が障害された場合には、迷走神経の心拍数を低下させる作用が減弱するため、結果として心拍数が高めになります。

自律神経障害の原因は糖尿病コントロール不良の結果ですから、まず取り組むべきは厳格な血糖コントロールです。しかしながら糖尿病重症例では血糖コントロールだけでは自律神経機能の回復が困難な場合もあります。心筋梗塞後の患者において副交感神経機能の低下が心臓突然死や心臓死と関連するという報告があります。副交感神経機能の低下が相対的に交感神経機能優位な状態をつくりだしている可能性があります。

β遮断薬は心筋梗塞および心不全の患者の生命予後改善効果が示されています。糖尿病を合併した心筋梗塞、心不全例においてもβ遮断薬は積極的に投与を考慮すべき薬剤です。

また非薬物療法として運動療法は、副交感神経機能の改善効果が期待できます。糖尿病の患者においては血糖値改善のためだけではなく、自律神経機能改善のためにも運動療法が推奨されます。

Only One Message

安静時心拍数の高い糖尿病患者は自律神経障害を合併している可能性があります。

回答:丹野 郁

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