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不整脈 Question 23

症状の乏しい心房粗動にはどう対処するのがよいでしょうか

心房粗動は心房興奮頻度が比較的遅い(毎分300拍程度)Ⅰ型と、心房興奮頻度が速い(毎分350拍以上など)Ⅱ型に分けられます。

Ⅰ型心房粗動のうち心電図の下壁誘導が陰性鋸歯状波(F波)を示すものは通常型と呼ばれ、多くの場合、心房興奮は三尖弁輪を反時計方向に旋回しています。心房興奮波が三尖弁輪を時計方向に旋回する場合は陽性鋸歯状波となります。Ⅰ型心房粗動は特殊な設備を要することなくカテーテルアブレーンで根治できるため診断的意義が高いと考えます。一方、Ⅱ型心房粗動のカテーテルアブレーションには三次元マッピングシステムなどの専門装置が必要です。

心房粗動の症状を訴える症例に治療が必要なことに異論はありません。しかし心房粗動は抗不整脈薬の効果(停止とその後の洞調律維持)が限定的で、Ⅰ群抗不整脈薬を使用する場合は、粗動周期の延長、また一部の薬剤では抗コリン作用のために、1:1房室伝導を誘導する危険性を考慮する必要があります。

心房粗動症例は心拍数の日内変動も大きく、夜間は徐脈(毎分50回以下など)であっても、日中は軽労作で著しい頻脈(毎分200回以上など)を呈する症例がまま経験されます()。これは労作によって房室伝導が亢進し、心房興奮が心室に伝導する比率が増加(4:1伝導が2:1伝導など)するためと解されます。

心房粗動が持続している症例は不整脈の状態に慣れているため、問診では訴えが乏しい場合があることに留意する必要があります。このような症例でも心エコー検査での壁運動低下・血液検査のBNP上昇がまま認められ、カテーテルアブレーション治療を行うと、治療効果(体が軽くなった)を実感していただけます。

Ⅰ型心房粗動のカテーテルアブレーションの方法は確立されており、高い成功率と安全性が報告されています。治療が成功することで抗不整脈薬を中止することができ、根治が確認されれば抗凝固療法の中止も期待できます。お勧めしたい治療法ではありますが、生活範囲が限定されている高齢者などで、自覚症状と心不全兆候がなく、心拍数が安定している症例は通院観察にしているのも現状です()。

図 I型心房粗動の2症例
上段(A)の症例は心拍数の変動が大きく、薬物療法が困難であったため電気ショックで洞調律に復帰させた。
下段(B)の症例は日常生活に支障を訴えず、心拍数も適度に調整されていたため、通院観察を行っている。

池主図.jpg

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症状の乏しい心房粗動症例であっても、再発性のⅠ型心房粗動で心機能低下の兆候があればカテーテルアブレーションをお勧めしたいと思います。

回答:池主 雅臣

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