日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 不整脈に関するQ >心房細動のアブレーション後にも抗不整脈薬は使われるのですか
不整脈 Question 20
□心房細動に対するカテーテルアブレーション後には、急性期(2~3ヶ月以内)の再発を認めることが少なくありません。急性期再発を認める症例のうち慢性期には心房細動の再発が認められなくなる例がありますが、その割合は約30%であり、急性期再発の無い症例(85%)に比べると慢性期の洞調律維持率は低いことが分かっています(Oral H et al. J Am Coll Cardiol 2002; 40: 100-104)。
□それではこの急性期の心房細動再発を抗不整脈薬の投与で抑制することによって慢性期の再発を抑制することができるでしょうか。
□Gerstenfeldらは発作性心房細動患者に対してカテーテルアブレーションを行った110例を抗不整脈薬投与群(53例、6週間の抗不整脈薬投与)と非投与群(57例)の2群に割り当てて、心房細動再発の有無などを比較検討しています(Roux JF et al. Circulation 2009; 120: 1036-1040, Leong-Sit et al. Circ Arrhythm Electophysiol 2011; 4: 11-14)。
□その結果、抗不整脈薬を投与した6週間後の一次エンドポイント(24時間以上持続するもしくは入院や除細動、抗不整脈薬開始・変更が必要な心房性不整脈の発生や副作用などによる抗不整脈薬中止)の発生が抗不整脈薬投与群で非投与群に比べ抑制されました(19% vs. 42%; p = 0.005)。しかしながら、アブレーションから6ヶ月後の洞調律維持率は、両群間で有意差を認めませんでした(不整脈薬投与群 72% vs. 非投与群 68%; p = 0.84)。
□Pokushalovらは発作性心房細動に対してカテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)を行ったあとに慢性期再発を認めた154例を対象として、再度肺静脈隔離術を行う群(77例)と抗不整脈薬投与群(77例)の2群に割り当てて、心房細動再発の有無などを比較検討しています(Circ Arrhythm Electophysiol 2013; 6: 754-760)。
□その結果、3年間のフォローアップ期間で心房性不整脈を認めなかった割合が、再度肺静脈隔離を行った群で58%だったのに対し、抗不整脈薬投与群ではわずか12%でした(p < 0.01)。
□以上の結果から発作性心房細動のアブレーション後に抗不整脈薬を投与しても慢性期の再発を抑制することは難しいということが分かります。
□しかしながらアブレーション後の抗不整脈薬投与に意味がないということではありません。アブレーション後の急性期に生じた心房性不整脈を抑制し、患者さんの自覚症状を改善させる効果は期待できますし、実際の臨床現場では、目の前の患者さんが心房細動の再発で困っていたら、抗不整脈薬を投与することが多いです。ただしそれと同時に再度のアブレーション治療も選択肢の一つとして頭の中に入れておかなければなりません。
□なお上記研究は症例数がそれほど多くありませんし、持続性心房細動へのアブレーション後の抗不整脈薬投与の意義なども含め今後の検討が必要になります。
回答:宮本 康二
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