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診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

不整脈 Question 18

心室期外収縮の連発はリスクになりますか

一般的には心機能が正常な例で、基礎心疾患のない例では心室期外収縮(PVC)があっても予後は良好といわれています。しかし、1日総数2万発をこえる例では長期的に心機能低下が認められることが報告(Heart 2009;95:1230–1237.)され、このような症例では4連発以上のPVCを有する割合も多くなることが知られています。

そのため、PVC連発を有する例では1日総数も念頭に置き心不全症状と同様に心機能の経過にも注意しながらフォローアップする必要があると思われます。また、運動負荷中にPVCの連発または10%を超えて頻発する例ではその後心臓死が多かったという報告があり(N Engl J Med 2000;343:826-33.)、PVCを有する症例では運動負荷試験がリスク評価の一手段として有用です。

器質的心疾患を有する場合は、心拍数>100/分のPVC3連発以上である非持続性心室頻拍(NSVT)の存在は予後に悪影響があると考えられており、慎重に対応する必要があります。

多くの研究が行われているのは虚血性心疾患で、従来多発性のPVCとNSVTは予後不良と考えられ、特にこの影響は左室駆出率(LVEF)が低い(<30%)とより顕著であるとされてきました(Am J Cardiol 58:1151-1160, 1986)。

NSVTの連発数に関しては、6560人という多数の非ST上昇型急性冠症候群患者を対象にした研究(Circulation 2010;122:455– 62.)があります。この試験では心拍数が毎分100を超えたNSVTを3連発、4~7連発、8連発以上の3群に分けて解析を行ったところ、NSVT3連発群の心臓突然死率はNSVTを認めない群とほぼ同様(ハザード比1.1)でしたが、4~7連発ではハザード比で2.3、8連発以上では2.8と有意に上昇したことが報告されました。特に入院後すぐではなく、48時間を超えて発症した時に有意であったことが示され、同時に残存虚血の有無の重要性も示されています。

これに対し近年の陳旧性心筋梗塞症例を対象にした研究では、βブロッカーが内服され、残存虚血のない症例ではNSVT単独では独立した予後予測因子でないという報告も多く、この場合も心機能、残存虚血の有無が心臓突然死予測には重要な要因であると考えられています(J Am Coll Cardiol. 2012;60:1993–2004.)。

非虚血性拡張型心筋症に関しても心筋梗塞後患者と同様にNSVTの存在は独立した予後指標になるかどうかは未だ議論のあるところです。様々な予測指標の中でも比較的有用な指標はやはりLVEFとされているため、NSVTを有しLVEF40%未満の症例は精査の対象とすべきです。

日本循環器学会ガイドラインでは冠動脈疾患、拡張型心筋症のいずれでもLVEF<35%で非持続性心室頻拍を有するNYHAⅡまたはⅢの心不全症例では植え込み型除細動器の適応となります。

他にLVEFで判断しにくい疾患として、肥大型心筋症やBrugada症候群・QT延長症候群などの遺伝性不整脈疾患があげられますが、このような基礎心疾患が疑われる場合は個々にリスクを評価しなければならず、専門医への紹介が必要と考えられます。

Only One Message

心機能正常例の心室期外収縮連発は通常予後良好ですが、基礎心疾患を有する例では専門医への紹介が必要

回答:加藤 律史

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