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不整脈 Question 7

心房細動の脳梗塞予防に新しい抗凝固薬が出てきました。使い方の留意点を教えてください

心房細動患者において、その予後を規定する心原性脳塞栓を予防することは最も重要な課題です。これまで半世紀以上、ワルファリンのみの経口抗凝固薬時代が続いてきましたが、2011年以降新規経口抗凝固薬(NOAC)が相次いで発売され、現在は3剤(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)が使用可能となりました。

ワルファリンは、脳梗塞予防効果は高いですが、比較的狭い治療域と用量の個人差、食事や他の薬剤の影響、診察毎の採血による効果チェックなどの問題があり必要とされる患者に必ずしも十分使用されてきませんでした。一方、NOACは食事の影響がなく、用量の個人差が少ないこと、服薬して速やかに効果が得られること、脳梗塞予防効果はワルファリンと同等かそれ以上、頭蓋内出血は極めて少ないことから、ワルファリンに代わるより使いやすい抗凝固薬として使用率も高まっています。

■NOACの使い方の留意点■

まず第一に心房細動でも適応は非弁膜症性に限られます。弁膜症性心房細動の定義は、リウマチ性の僧帽弁狭窄症あるいは人工弁置換術を行った心房細動ですのでそれ以外はすべて非弁膜症性です。大動脈弁疾患、あるいは僧帽弁閉鎖不全であれば、非弁膜症性の定義に当てはまるのでNOACの適応はかなり広いと言えます。

次に注意しておきたいのが腎機能です。腎臓での排泄率はダビガトランが80%と最も高く、リバーロキサバンでは未変化体排泄は約1/3、アピキサバンは1/4であり、いずれの薬剤も高度腎機能障害患者には使用できません。使用前に必ず推定クレアチニンクリアランス値(Ccr)を算出しましょう。CcrはCockcroft-Gault式で計算します。年齢、体重、性別、血清クレアチニン値から算出できますが、手動のスケール、Ccr算出用の電卓などを用いて簡単に計算できます。

非弁膜症性心房細動に対して新たに経口抗凝固薬を始める場合、腎機能が正常あるいは軽度低下であれば、まずNOACを考慮します。私は腎機能の目安としてダビガトランではCcrが40ml/min以上、リバーロキサバン、アピキサバンでは30ml/min以上を許容範囲としています。

第3の留意点は、使用する用量です。各薬剤とも2用量が使用可能です。但し、ダビガトランでは150㎎、110mg1日2回でいずれも独立したデータがあるのに対し、リバーロキサバン10mgはCcrが30-49ml/minの患者、アピキサバン2.5㎎は、80歳以上、60㎏未満、クレアチニン値1.5mg/dl以上の3項目のうち2つ以上を満たす患者に使用される調整用量であることを理解しましょう()。

図  NOACの2用量と減量基準
是恒表.jpg
 

この基準にあてはまらない患者への低用量選択は、効果不発揮を招き十分な脳梗塞予防ができない可能性があります。また、抗凝固薬使用の一般的な注意として、活動性の出血性疾患がある場合は禁忌ですが、出血性疾患の既往(たとえば胃潰瘍など)があっても現在治癒していればNOACの開始は可能です。

投与開始後も定期的にヘモグロビン値を測定して、不顕性出血がないかのモニターをしておきましょう。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

新規経口抗凝固薬、使用前には必ずクレアチニンクリアランスを確認しよう。

回答:是恒 之宏

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