日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 不整脈に関するQ >70歳男性が初めて動悸発作を経験しました。来院時は頻拍も停止していたので、心房細動か発作性上室頻拍かわかりません。どこまで検査を行うのがよいでしょう
不整脈 Question 4
□Rodriquezら1)によると、房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)は女性に2倍多く、房室回帰性頻拍(AVRT)は男性に2倍多いと報告されています。いずれも約半数が30歳までに発症し、60歳以後に初発する例もありますが、頻度は多くありません(図1) 。
図1 発作性上室性頻拍における初回発作発症年齢(文献1より改変)
□一方で心房細動新規罹患率は男性に多く、Psatyら2)によると、70-74歳で28/1000人年と言われ、高齢者になるほど心房細動の罹患率は増加いたします (図2) 。本症例では70歳で初回発作であることを考えると心房細動の可能性が高いと考えられます。
図2 高齢者における新規心房細動発症率(文献2より改変)
□高齢者における不整脈では心臓超音波検査により基礎心疾患の有無を確認し、24時間ホルター心電図を一度は行っておくべきでしょう。無症候性頻拍発作をとらえることができるかもしれません。24時間ホルター心電図ではとらえられない不整脈も、1週間記録できるイベントレコーダーであればとらえられることもあります。労作時に増加する不整脈であれば運動負荷心電図なども良い適応と考えられます。さらに持続時間の長い頻拍を自覚された場合は医療機関にて心電図を記録していただくよう御指導いただきます。
□しかし非発作時に精査を試みても異常をとらえられないことが多く、患者さんの苦悩の原因を指摘することができず、精神的に追い込まれる方も少なくありません。それを解消するためにもご本人に検脈の方法を教育していただくことが重要と考えられます。われわれ医療従事者のみならず、患者さんやご家族が不整脈の種類をある程度予想できるようになるからです。これにより患者さんやご家族の過度な不安を解消することにもつながります。
□欠滞のみであれば期外収縮の可能性が高いため安心していただくようお話します。規則正しい頻拍は発作性上室性頻拍の可能性が高く、迷走神経刺激法で治療する方法も教育していただくとよろしいでしょう。また不規則な頻拍の場合は心房細動の可能性が高いため、48時間以上持続した場合脳梗塞のリスクが高まります。余裕を持って数時間程度持続した場合は放置せずに医療機関を受診頂くようご指導いただくことが重要と考えます。
参考文献
1)Rodriquez LM, Age at onset and gender of patients with different types of supraventricular tachycardias, Am J Cardiol, 1992 Nov 1;70(13):1213-5
2)Psaty BM, Incidence of and risk factors for atrial fibrillation in older adults. Circulation 1997;96:2455-2461
回答:佐藤 明
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