日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 不整脈に関するQ >Brugada症候群が疑われる方には植込み型除細動器を植え込む必要があると聞きました。毎月一人は外来の心電図にBrugada症候群疑いという診断が出るのですが、それらの患者さんは専門医に紹介する必要がありますか
不整脈 Question 3
□Brugada症候群は、夜間心室細動から突然死をきたす疾患で、基礎心疾患を認めない比較的若年の男性に多く認められます。心電図は不完全右脚ブロックおよび右側胸部誘導V1-3のST上昇を特徴とします。(図1)
図1 Brugada症候群心電図(文献1より)
□2001年日本Brugada症候群レジストリーより、Brugada心電図異常の3年間フォローアップに関する論文が発表されました。2) 東京都内において職場検診を施行された成人10,000人(男性8,913人、女性1,087人、20歳~66歳(平均42±9歳))を対象に調査した報告です。登録時点で、105人(1.05%)にBrugada心電図異常を認め(男性99人、女性6人)、その内20人(0.2%)が心室細動、18人(0.18%)が失神を経験されており、残りの67人(0.67%)はいずれも経験されたことがありませんでした。(表1)
表1 日本Brugada症候群レジストリー登録患者臨床背景(文献2改変)
□これらの方々が3年間に不整脈イベントを発症する確率は、登録時有症状の方で25.7%、登録時無症状の方で1.5%と、有症状の方で多く、症状の有無は突然死を予測する重要な因子と考えられております。(図2)
図2 有症状・無症状例における心イベント無発症率(文献1)
□またCoved typeのST上昇もリスクと考えられております。表1に示す通り、心室細動や失神の既往のあるかたはCoved typeのST上昇が多く認められます。表2からも特に0.2mV以上の自然発生のcoved型ST上昇は、失神の既往がある方と同程度の突然死リスクがあると考えられております。さらには1親等内に突然死の家族歴を認めることも突然死のリスクと考えられております。(文献4)
表2 重篤な危険因子と心事故発生率(文献3より)
□これらを踏まえ、日本循環器学会のガイドラインでは、植込み型除細動器(ICD)に関する1次予防の適応は、失神の既往や家族歴の両方または一方があればIIaまたはIIbとなっております。(表3)
表3 Brugada症候群における突然死予防
「循環器病の診断と治療に関するガイドライン.心臓突然死の予知と予防法のガイドライン(2010年改訂版)http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010aizawa.h.pdf(2014年10月閲覧)」
□これらのリスクをお持ちの方は必ず、専門医への紹介をお勧めいたします。しかしBrugada症候群の突然死リスク評価は世界的にまだ研究段階であるため、これらリスクをお持ちでない方も、一度は専門医への紹介をお勧めいたします。
参考文献
回答:佐藤 明
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