日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 不整脈に関するQ >ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックを認める患者さんにβ遮断薬を用いることは危険ではないですか
不整脈 Question 1
□Ⅱ度房室ブロックはWenckebach型とMobitz II型に分類されています。Wenckebach型房室ブロックはPQ間隔が徐々に延長した後に、房室伝導が途絶するのに対して、Mobitz II型では突然房室伝導が途絶します。
□これらの分類は房室結節からHis束にかけて、どこでブロックが起きているか、によって決められているとされています。房室結節内ブロックはWenckebach型房室ブロックが多く、His束およびHis束下ブロックではMobitz II型ブロックが一般的とされています。
□しかし臨床的には明確にブロック部位が分けられている訳ではなく、ブロック部位が複数存在していることが知られています。房室結節の周囲には交感神経や副交感神経がネットワークを作って、自律神経による調節を行っています。
□Wenckebach型房室ブロックは房室結節内で、副交感神経が興奮することによって出現する機能的なブロックであることがよく知られています。しかしながらHis束内やHis束下でもWenckebach型のブロックの形をとることも、稀ではあるが知られています。こういった症例では、機能的な障害というよりも、Mobitz II型のような器質的な障害を示唆すると考えてもいいかもしれません。
□このようなリスクの高いWenckebach型ブロックの有無を示唆する背景因子としては 1)年齢 2)器質的心疾患の有無 3)ブロックによる症状の有無 が考えられます。したがって、β遮断薬を使用する際には、各種検査によるブロック部位の予測に加えて、予期せぬ徐脈によるイベントをさけるために、年齢を考慮した薬物の選択、容量の設定が必要と思われます。
□進行性の心疾患が存在する場合も、房室伝導時間をこまめにチェックしながら、少量から薬物を使用するなどといった工夫が必要だと思われます。β遮断薬の使用量に関しては、患者の症状を注意深く観察しながら設定していく必要があるように思います。
回答:小山 崇
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