日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > その他に関するQ >副作用として浮腫を生じる薬剤にはどういうものがありますか

循環器最新情報 日本心臓財団は医療に携わる皆様に実地診療に役立つ循環器最新情報を配信しています。是非お役立てください。

診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

その他 Question 3

副作用として浮腫を生じる薬剤にはどういうものがありますか

浮腫は日常診療の中で最も頻繁に遭遇する症候の一つです。浮腫の病態は、間質への水分貯留ですが、に浮腫の原因を機序ごとに列挙しました。浮腫の患者を診るときは、一般的に全身性浮腫か局所性浮腫か、圧痕性浮腫か非圧痕性浮腫かの判別に加えて、問診や血液検査、画像診断を組み合わせて鑑別診断を進めます。

表 浮腫の原因
 

① 毛細血管静水圧の上昇 心不全、腎不全、静脈閉塞、リンパ管閉塞など
② 血漿浸透圧の減少 肝不全、低栄養、ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症候群など
③ 血管透過性亢進 感染症、アレルギー、炎症など


浮腫の原因の一つに薬剤性浮腫があります。有名なものでは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、抗生剤、抗癌剤などがあります。原因となる薬剤によって浮腫の機序は様々です。

NSAIDsではプロスタグランジン産生抑制によって、腎血流低下や尿細管の水再吸収亢進が起こるため体液貯留傾向となります。カルシウム拮抗薬では動脈優位の血管拡張が起こり、毛細血管静水圧が上昇し浮腫の原因となります。ACE阻害薬ではクインケ浮腫と呼ばれる限局性浮腫をきたすことが知られており、ときに喉頭浮腫から気道閉塞となり致死的な結果となります。ほかにも、ペニシリン系抗生剤や炭酸水素ナトリウム注射液などのNa含有量過剰による体液貯留、抗癌剤などの直接的な腎毒性•腎不全からの浮腫など、機序は多彩です。

薬剤性浮腫は除外診断ですが、新しく薬剤を内服開始した後に発症した浮腫では、薬剤性浮腫を疑うきっかけとなります。体液貯留が存在する場合は利尿薬が奏効することもありますが、基本的には原因薬剤の中止が治療となります。

上記以外にも浮腫をきたす薬剤は多々報告されており、全てを記憶するのは困難です。原因不明の浮腫では、薬剤性浮腫を鑑別に挙げることが重要です。

(2014年10月公開)

Only One Message

浮腫をきたす薬剤は多々あり、その機序も多様である。原因不明の浮腫では薬剤性浮腫を鑑別診断に入れる。

回答:金森 健太

キーワード検索

検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。

ご寄付のお願い