日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 虚血性心疾患に関するQ >症状や心電図から急性心筋梗塞と思われる患者さんでは、専門病院に送る前に抗血小板薬を投与することも勧められると聞きました。具体的にどういうふうに行えばいいですか
虚血性心疾患 Question 3
□急性心筋梗塞はアテローム性動脈硬化の不安定プラークが破裂した部位に血栓が生じることで発症すると考えられており、心筋ダメージを最小限にとどめるために早急な再疎通が必要です。血栓の形成の際にはまず血小板凝集が起こりますが、動脈硬化性病変では元々血小板の活性化が起こりやすく、さらに局所の炎症反応がこの反応を促進すると考えられています。
□アスピリンは古くから知られている消炎鎮痛剤ですが、抗血小板作用を有することが知られており、さらに心筋梗塞発症早期からの投与で死亡率が低下することが示されています。経口摂取したアスピリンは胃から吸収されると30分程度で血中濃度がピークに達し、60分以内に抗血小板作用を発揮します。腸溶錠のアスピリンはそのまま内服すると効果が出るまでに3?4時間かかりますが、かみ砕いて服用すると胃から吸収され、速やかな抗血小板作用が期待できます。日本循環器学会のガイドラインでも専門病院に送る前から162mgから325mgをかみ砕いて服用させることが推奨されています。
□ところで急性心筋梗塞症例の再灌流の手段としては経皮的冠動脈形成術(Percutanaous Coronary Intervention;PCI)が行われることが多く、そのほとんどでステントが留置されます。ステントを留置した症例には血栓症予防のため、アスピリンに加えてチエノピリジン系薬剤を服用する抗血小板薬二剤併用療法(Dual Anti-platelet Therapy: DAPT)が行われます。
□チエノピリジン系薬剤としては当初はチクロピジンが使用されていましたが、肝機能障害、顆粒球減少症、血栓性血小板減少性紫斑病などの副作用が問題となったため、現在では副作用の少ないクロピドグレルが標準的に使用されています。チクロピジンの効果発現には内服後1?2日かかりますが、クロピドグレルの場合は初期負荷投与300mgを行う事で数時間後からの効果が期待できます。
□CREDO試験(JAMA 2002;288:2411)の結果からは、クロピドグレル300mgの初期負荷をPCIの6時間以上前に行う事で死亡、心筋梗塞、緊急を要する標的血管の再血行再建術の相対リスク減少効果が認められています。このため急性心筋梗塞で緊急PCIを行う可能性が高い場合にはアスピリンに加えてクロピドグレルの初期負荷投与も推奨されます。
□ただしチエノピリジン系薬剤の抗血小板作用は不可逆的ですので、その作用は血小板寿命の7?10日間持続すると言われています。特異的中和剤はありませんので、緊急手術を行う場合には血小板輸血を考慮する必要があります。
回答:伊達 基郎
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