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一般向けメールマガジン 第230号

HEART WEB NEWS No.230

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第230号】2024年10月1日発行(月刊)
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【目次】
 トピック:BNP検査について
啓発動画のご紹介:ACジャパン支援広告/AED普及動画
 ドクターのつぶやき:聴診器は復権するか
 ご寄附のお願い

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【トピック】

 BNP検査について

 BNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)は心臓から分泌されるホルモンです。BNPには、血管を広げ、尿を出す作用があります。血管が広がれば、心臓は楽に血液を全身に送り出せます。また、尿量を増やし、余計な水分や塩分を排泄させることで、むくみや息切れを改善します。このように、心臓に負担がかかったとき、心臓が自分を守るために出すのがBNPなのです。したがって、心臓の負担が増えるようなことがあるとBNPの値が高くなります。

 血液検査でBNPあるいはBNPの前駆体の一部であるNT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)を測定するのは、その値が高いと心臓に負担がかかっていると考えられるので、心不全の診断や経過をみるマーカーとして有用だからです。

 一般に、BNPの正常値は20pg/mL以下、NT-proBNPの正常値は55pg/mL以下とされていますが、いずれも加齢とともに増加する傾向にあります。BNPならご自分の年齢より小さければ、NT-proBNPなら、この値を3あるいは4で割ってそれがご自分の年齢より小さければ、それほど心配する必要はないと考えられます。

 BNPやNT-proBNPが増加する代表的な状態は息切れやむくみなどが生ずる心不全です。心不全をおこす代表的な疾患として心臓弁膜症、心筋症、心筋梗塞などがあります。症状がなくとも心肥大があるとそれだけでも高値を示します。また心房細動でも増加します。特にNT-proBNPは腎臓から排泄されるので、腎臓の働きが低下していると増加します。

 血液中の微量のホルモンを測定していますので、BNPでもNT-proBNPでも、元の値の2倍以内程度の変化はあまり大きな意味はありません。わずかな数値の変化は心配せずに、医師によく説明を聞いてください。

 なお、BNP、NT-proBNPは、保険診療上、いずれかを月に一回の測定に限られます。

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【啓発動画のご紹介】

■ACジャパン支援広告キャンペーン「なかやま検脈!」

 日本心臓財団では、7月よりACジャパン支援広告キャンペーンによる「心房細動の早期発見:なかやま、検脈!」をTV・ラジオCM、新聞広告等で展開しています。
 皆さんに、脳卒中や心不全の原因となる心房細動という不整脈を知っていただき、家庭での検脈と継続的な検診による早期発見を心がけていただけますと幸いです。

 広告の映像は、こちらからご覧いただけます。(ACジャパン ホームページ)
 https://www.ad-c.or.jp/campaign/support/support_04.html

■AED普及キャンペーン動画「動かせ、運命。」

 AEDを一般市民が使用できるようになって20年、この動画で改めてAEDを知るきっかけになっていただき、さらに多くの命が救われることを願います。
 「動かせ、運命。」(制作:日本AED財団、協力:AED20周年記念実行委員会)
 https://www.youtube.com/watch?v=AO4Sv8OOKRE

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【ドクターのつぶやき】
 
 聴診器は復権するか

「お医者さん」を表現するイラストの必須アイテムは白衣に額帯鏡、それに聴診器であろう。額帯鏡はともかく、聴診器は内科医にとっては最も身近で有用性の高い医療機器であると思う。特に循環器医にとっては、診断や病態の判断に必要な情報を得るに際して最も簡便で必須のツールであると信じてきたし、医学生や若い医師にそう教え続けてきた。
 私自身は外来や病棟で執務するときに聴診器を携行しないことはありえない。ところが、私が奉職している循環器専門病院には約100名の循環器科医師がいるが、聴診器を携行している病棟医はほとんどいない。確かに聴診の情報は究極のアナログ情報であり、五感をもって得られる情報であるため、他者との共有が困難な非客観的情報の極みであろう。

 半年近く微熱と倦怠感を訴えてきた24歳の女性がどの病院でも診断がつかないとのことで紹介されてきたことがある。頚部に聴診器を当てたところ、強勢な血管雑音が聴取され、即座に高安動脈炎と診断した。それまで診療をしてきた複数の内科医師は首に聴診器を当てることを怠ってきたのだろう。たかが聴診、されど聴診である。聴診で得られる心不全のIII音は心エコーではキャッチできないし、ましてBNPに置き換わる情報ではありえない。
 聴診は消え去って過去の技術となり、聴診器は博物館に収められるのであろうか。そんなことも頭によぎってしまう。

 先日勤務している病院で小中学生を対象に「心臓を守る親子教室」と称して、イベントを開催した。私が担当したブースでは、参加したお子さん全員の心音をスピーカーを通して聴き、リアルタイムの心音図をモニターに映した。自分の心音を目で見、耳で聴いた時の子供たちの目の輝きが忘れられない。
「お母さんのおなかの中にいたときはずっとこの音を聴き続けていたんだよ」と言うと、後ろにいる母親たちは皆満足気で、幸せそうなほほ笑みを浮かべる。I音、II音の成因から心臓の構造・機能、弁膜症の雑音に話が及び、最後にTAVI治療のデモを見せ、デバイスに触れてもらったこのブースはイベント中の一番人気であった。
 その時使用したのが「超聴診器」(AMI社、熊本)である。明瞭に心音が聴取でき、遠隔医療支援も可能な優れたデジタル機器である。
 最近は大動脈弁狭窄症の患者が増加していることを反映して、TVでも少し前に日本心臓財団の支援の下で聴診を勧めるCMが流されていた。聴診の世界に新しい風が吹き始めているのかもしれない。

 初診の患者に頚部から心肺、腹部の聴診・触診をすることは私のルーチンであるが、そのような診察をした後に患者から、「丁寧に診察していただいてありがとうございます」と感謝されたことが何回かある。以前はなかった経験である。聴診器は病態の情報を簡便に取得するための優れた情報機器であると同時に、直接患者の肌に触れ、顔を胸に近づけて聴き入る医師の姿に患者が信頼感を寄せる、そんな究極のコミュニケーションツールでもある。
 聴診の復権を願うばかりである。(M.I.)

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