一般向けメールマガジン 第201号
HEART WEB NEWS No.201
====================================================【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第201号】2022年5月31日発行(月刊)
====================================================【目次】
トピック:禁煙週間
ドクターのつぶやき:正岡子規の「病床六尺」から思う
ご寄附のお願い
====================================================【トピック】
禁煙週間
5月31日は世界保健機関(WHO)が1989年に定めた世界禁煙デーです。日本でも厚生労働省が1992年から世界禁煙デーに始まる一週間を「禁煙週間」として定め、健康のための禁煙を呼びかけ、禁煙を始めるきっかけとなるようキャンペーンを毎年、実施しています。
また、望まない受動喫煙の防止を図るために、健康増進法の一部を改正する法律が2018年7月に成立し一昨年4月から施行されました。
たばこには血管に悪影響を及ぼす物質がたくさん含まれています。代表的なのが、ニコチン、一酸化炭素、活性酸素です。ニコチンは血管を収縮させます。一酸化炭素は酸素の250倍も血色素(ヘモグロビン)と結びつく力があるため、ヘモグロビンが酸素と結合できずに、酸素を運べなくなってしまいます。活性酸素は血管を拡げる一酸化窒素(NO)の働きを阻害し、血管の内膜を傷つけて動脈硬化のきっかけとなり、傷ついた内膜から悪玉コレステロールが血管の中に入り込むようになります。
こうした有害物質は、主流煙(タバコを吸っている人が体内に吸い込む煙)より、副流煙(タバコの先から出る煙で、周りの人が吸ってしまう煙)のほうに多く含まれていることにも問題があります。副流煙による有害物質は、吸った人が吐き出した煙や、洋服、絨毯にくっついたものにも含まれています。タバコを吸うことは、自分にとって有害なだけでなく、周りの人にとっても有害なのです。
最近、加熱式タバコに含まれる有害物質は、一般のタバコより少ないといわれています。しかしこのことは、加熱式タバコが実際の健康障害(がん、心筋梗塞等々)を減少させるということを意味しません。現在、最も重要な加熱式タバコ服用者を対象にした臨床データがなく、不明です。にもかかわらず加熱式タバコが実際の健康障害を減らせると早合点する人がいますので、注意が必要です。
今年の禁煙週間のテーマは、「たばこの健康影響を知ろう!~若者への健康影響について~」です。2022年4月1日から成年年齢が引き下げられた一方で、喫煙に関する年齢制限については引き続き20歳以上とされていることや喫煙開始年齢の早さと全死因死亡に十分な因果関係があることが報告されていること等から、喫煙開始年齢と健康影響の関係について、特に若年者への普及啓発が重要となっています。
感染症の重症化防止と健康寿命の延伸のために、ぜひこの禁煙週間をきっかけに禁煙をはじめましょう。
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【ドクターのつぶやき】
正岡子規の「病床六尺」から思う
たまたま正岡子規の「病床六尺」を再読した。子規は若いときに罹患した肺結核が進行し、結核性のカリエスとなって、病床六尺の生活となり、7年後、36才で永眠されている。
まず、冒頭、目についたのは、「肺を病むものは肺の圧迫せられることを恐れるので、狭い家は苦しく感じる。目の前に大きな人が座っていても息苦しく感じる」、「いつも横に寝ているものには、目の高さも低くなり、高さ一尺の火鉢も三,四尺の高さに感じる。」と書いてあったことである。
私が気づいていなかったことだった。こういうとき、「呼吸器の弱いものは非常な圧迫を感じて、精神も呼吸も同時に苦しくなる」という。教えられたという思いがあった。
近年、若い人のパニック症候群の相談が少なくないようである。話を聞くたびにいつも、発作のきっかけになるのは何なのか、が気になっていた。読んでいて、こういう形の圧迫感というものが誘因になるのかも知れない、と思ったのである。
「便通後、やや苦しく、例によりて麻痺剤を服す。薬いまだ利かざるにすでに心愉快になる」。こちらは偽薬効果である。これに、かの有名な文章、「この頃はモルヒネを飲んでから写生をやるのが何よりの楽しみとなっている」がつづく。
パニック症候群の人の場合には、発作的な呼吸困難のために、気管支喘息が疑われて呼吸機能検査が行われていることもよくある。そして、一秒率の低下やフローボリューム曲線の異常がみられると、喘息発作が引き金になった気管支喘息の合併例と診断され、投薬を受けるようになっていく人も少なくない。パニック症候群の発作のきっかけとして、気管支喘息の可能性は否定できない。しかし、一秒率の低下というものには例えば、呼吸器筋力が低下したためというような結果的なものである可能性はないのであろうか。むしろ、子規が感じている圧迫感といったものが発作の引き金になっているということはないだろうか。そしてまた、その対策の一つには子規も気が付いている偽薬効果といったものも考慮しての工夫はできないものだろうか。
たまたま「病床六尺」を再読していて、思い浮かんだことである。病気に悩む方のお気持、あるいは診療にあたる方のご批判、ご訂正をお願いできないものだろうか、と思っている。
追記:「一秒率には呼気筋の筋力低下が影響することはないのか」ということが気になって、二人の呼吸器内科医に聞いてみた。内科医Aは筋力低下で一秒量は低下するが、一秒率は低下しにくい、といい、内科医Bは一秒量の低下が前面にでるが、一秒率も低下するようになる、ということであった。喘息診断にはフローボリューム曲線が重視されているようだった。また、パニック発作が引き金になって喘息発作を起こす場合が多くみられるともいっておられた。(T.S.)
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