一般向けメールマガジン 第200号
HEART WEB NEWS No.200
====================================================【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第200号】2022年4月1日発行(月刊)
====================================================【目次】
トピック:高血圧はサイレントキラー(静かなる殺人者)
ドクターのつぶやき:老人六歌仙
ご寄附のお願い
====================================================【トピック】
高血圧はサイレントキラー(静かなる殺人者)
人間の心臓は、ポンプのように収縮と弛緩を繰り返して、酸素と栄養を運ぶ血液を全身に送り出しています。このとき心臓から送り出される血液が、血管(動脈)の内側に与える圧力を血圧といいます。
心臓が収縮して一番強く血液を送り出すときの血圧を収縮期血圧(上の血圧)、心臓が拡張しているときの血圧を拡張期血圧(下の血圧)といいます。
血圧は心臓から近い部分の血管では高く、手足などの末梢血管では低くなります。私たちが血圧を測るときは、上腕部の血圧を基準にしています。日本高血圧学会のガイドラインでは、病院で安静時に上腕部での血圧を測った場合に、成人で収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を高血圧として、生活習慣の改善や薬物療法など何らかの治療・対策が必要としています。血圧は家庭では病院におけるよりも低めになりますので、最近普及している家庭血圧計では、収縮期血圧/拡張期血圧が135/80mmHg以上を高血圧としています。この血圧の単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)といい、血圧計が水銀柱の高さで血圧を測っていたことに由来しています。
血圧は常に変動しており、睡眠中は低く、活動中は高くなり、運動やストレス、気温でも変化します。ですから、血圧の値は、毎日同じ時間(起床後1時間以内で排尿後、服薬前、朝食前、座位で1~2分間の安静後)に計り、1週間の平均値で判断します。
血圧が高い状態(高血圧)では、心臓がいつも強い力で血液を押し出している状態のために、心臓に大きな負担がかかっています。そうした状態が長い間ずっと続くと、やがて心臓が肥大するとともに疲れて心臓の機能が低下してしまいます。また、血管内の壁にも高い圧力がかかるため、動脈硬化が進行しやすくなります。ところが、こうした状態は自覚症状がなく、気づかないうちに心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことから、高血圧はサイレントキラー(静かなる殺人者)と呼ばれているのです。さらに、高血圧に脂質異常や高血糖、肥満など他の危険因子が重なると、心筋梗塞や脳卒中になる危険が大変高くなります。
高血圧の予防は、生活習慣の改善が重要です。なかでも塩分の摂り過ぎは血圧を上げる大きな原因となりますので、減塩が大切です。日本高血圧学会では、一日6g未満の食塩摂取量を推奨しています。ちなみに現在の日本人の平均食塩摂取量は、男性10.9g、女性9.3gです(2019年国民健康・栄養調査)。食塩を控え、また加工食品などに含まれる塩分にも注意しましょう。また適度な運動は体内の血圧を下げる物質を増やし、血圧を上げる物質を減らす効果があります。コロナ禍のためもあり、ついつい運動不足になりがちですが、体を動かす工夫をしましょう。
5月17日は「高血圧の日」と定められています(日本高血圧協会)。自分の血圧を測り、生活習慣の改善に心がけるきっかけにしてはいかがでしょうか。
====================================================【ドクターのつぶやき】
老人六歌仙
老年医学の泰斗、小澤利男先生のご著書「老年医学と老年学―老・病・死を考える」(ライフ・サイエンス社、2009)に江戸時代後期の禅僧、仙崖(1760-1849)の六歌仙狂歌が紹介されていた。
1.しわがよる、ほくろができる、腰曲がる、頭がはげる、ひげ白くなる。
2.手は震え、足はよろつく、歯は抜ける、耳は聞こえず、目はうとくなる。
3.身に添うは 頭巾襟巻き、杖眼鏡、たんぽ、温石、尿瓶、孫の手。
4.聞きたがる、死にともながる*、淋しがる、心がひがむ、欲深くなる。
5.くどくなる、気短になる、愚痴になる、でしゃばりたがる、世話焼きたがる。
6.またしても、同じ話に、子を誉める、達者自慢に、人は嫌がる。
(*注:死にともながるは、死にたくないと言いたがる、の意)
狂歌の下に6人の老人歌仙の戯画があった。老人たちの腰は曲がり,杖をついているのであるが、表情は明るく、楽し気である。自らの不都合を自覚していなければ、楽しくできると教えているのだろうか。仙崖は89才でなくなっている。
狂歌の前半、第1から第3首はやむを得ないことであるが、後半、第4から第6首には自制できることがある。前半3首を軽くすませるためには、
「イ.身体を動かすこと、とりわけ、歩くこと」
を可能なかぎり、努めてみてはどうか。
そして、後半3首を軽くすませるためには、戯画にみるように、不都合を無視して楽しくすること、といいたいのだが、それでは傍迷惑である。とりあえずは、狂歌のどこかに該当していないか、を反省するようにしていたい。
「ロ.感謝され、喜ばれると思うこと」
を実行するのが目標なのだが、これが行き過ぎて、でしゃばり、世話焼き、にはならないように、控えめながら、一応は、心を砕いている。
100年、200年を経たからといって、人の老い方には変化はなく、六歌仙狂歌の次第は今日もなお、変わらない。ただ、これに対する対処の仕方には時代とともに変わっていくものがある。狂歌をみながら、今日の時代における対処のあり方を考えてみた。実は上記のイ、は自分が平素、心がけていること、ロ、は努めていることである。
こうした工夫を踏まえて、次世代狂歌は生まれてこないであろうか。(T.S.)
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