一般向けメールマガジン 第198号
HEART WEB NEWS No.198
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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第198号】2022年2月1日発行(月刊)
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【目次】
トピック:救急・救助の現況
ドクターのつぶやき:世を去るときは枯れ朽ちた草木のように
ご寄附のお願い
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【トピック】
救急・救助の現況
昨年末、総務省消防庁から「令和3年版 救急・救助の現況」(令和2年度中の統計)が公表されました。
当財団ホームページ掲載の「循環器最新情報 実地診療のためのデータベース 救急活動の現状」に掲載している図も、令和3年度版の数字に変更いたしました。
https://www.jhf.or.jp/pro/info/kyukyu.html
一般市民による目撃がある心原性心停止(心臓が原因の心停止)25,790人のうち、14,974人(58.1%)に一般市民が心肺蘇生を実施しており、一般市民による心肺蘇生実施率は約6割となっています。しかしながら、一般市民によるAEDでの除細動が行われたのはわずか1,092名(約4%)でした。
心原性心停止の場合、救急車の到着(全国平均約8.9分)を待っているだけでは1ヶ月後の生存率はわずか8.2%ですが、そこに居合わせた一般の方が心肺蘇生を実施すると1ヶ月後の生存率は約2倍の15.2%になります。さらにAEDによる除細動が行われれば1ヶ月後の生存率はなんと53.2%と、半数以上の方が救命され、その8割以上が1ヶ月後の社会復帰が可能になります。
一般市民によるAEDを使用した除細動が少しでも早く実施されることで、まだまだたくさんの命を救える可能性があります。
除細動が行われなかった例には、除細動の適応がなかった場合も含まれますが、その場にAEDがなかった場合も数多くあったと思われます。わが国のAED設置台数は約50万台以上ともいわれ、非常にたくさんの数が設置されていますが、適切な場所に設置されていない、設置場所がわからないということも考えられます。普段からAEDの設置場所を意識することが必要です。
一方で、コロナ禍の影響で消防庁をはじめとする救命講習の実施が大幅に減少した結果、講習受講者数も大きく減少しました。その場にいる一般市民の救命処置の実施が心臓突然死を防ぐ大きな力であることを考えると、新規受講者数及び既受講者の復習の機会が少なくなっていることは大変残念です。
最近は救命講習もオンラインにより自宅で行えるものなどもありますので、ぜひ定期的にご参加してみてください。
昨年5月、神奈川県の中学校において、休日のクラブ活動中に顧問の先生が心停止になり、生徒が心肺蘇生とAEDを使用して救命したという事例がありました。中学生のみで大人の命を救ったという素晴らしい事例であり、学校教育における救命講習の重要性が実証されたことも大きいと思います。
なお、現在は新型コロナ感染拡大防止のため、成人に対する心肺蘇生時に一般の方は人工呼吸を行わないことが推奨され、また胸骨圧迫時にもハンカチやタオルで傷病者の口と鼻を覆うことが推奨されています。
さらには、また感染が拡大し、地域によっては医療ひっ迫により救急医療が十分に実施できない状況にもなりつつありますので、ご自身の健康に留意して、体調管理や寒い日の外出などでの気温差に十分ご注意ください。
参考:日本AED財団が実施しているオンライン講習
https://aed-zaidan.jp/workshop.html
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【ドクターのつぶやき】
世を去るときは枯れ朽ちた草木のように
生きた細胞には必ず死が訪れる。老衰死というのは生命維持細胞の自然死が死因である。人口動態統計の死因別死亡数統計には老衰死という項目がある。手元の平成27年度統計では、総死亡中、老衰死の頻度は6.6 % であった。老衰死はすでに60才台で始まっている。64才までで0.03%、65~69才で0.2 %、70~74才0.4 %、75~79才1.3%、80~84才3.3%、85~89才7.0 %、90~94才13.8 %、95~99才22.4 %であり、100才以上になると36.6 %という。つまり、90才台で5分の1,100才を越えると3分の1が老衰死であった。
老衰死と診断するのは老化のために死亡したと判断される場合であり、原因疾患が特定されず、自然経過で亡くなられたことを意味する。つまり、健康管理の上では恵まれた死であったということができる。
身近に経験されたいくつかの例を示してみる。
98才、私と遠い縁がある男性。ホームに入居していた。訪れた息子を誘ってコーヒー店に行った。戻ってきて、すやすやと眠り込んでいたが、寝息がふと止まった。
98才、女性。患者の母親である。こまめに働くのが好きな母親だったという。朝、人形の着物を手揉み洗濯していた。疲れたといってベッドに入り、娘の手を握っていたが、ふと寝息が止まった。娘は自分の手の中で母は亡くなったのだ、と感動していた。
92才、私の恩師になる男性。散歩から帰ってきたら息子が寿司をお土産に持参してきていて、喜んだ。寿司をいただいて、昼寝した。いつまでも起きてこないのでみに行ったら、亡くなっていた。
高齢でありながら、そして病気や治療の経歴があっても、いつも元気にしていたという方々も少なくない。ある日、突然に家人から、何もいわずに亡くなりました、と手紙がきたりする。
このような老衰死は自然経過で亡くなりたいと願う今の私にとって、望ましい死に様である。疾患がないか、あってもそれは原因ではないらしい、といい、健康管理上も恵まれていたというのであれば、いう言葉はない。(T.S.)
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