一般向けメールマガジン 第171号
HEART WEB NEWS No.171
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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第171号】2019年11月1日発行(月刊)
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【目次】
トピックス:治す医療から患者の生活を支える医療に
お知らせ:まごまごするより、まず検診。
イベント情報
ドクターのつぶやき:豊富な医療情報の功罪
ご寄附のお願い
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【トピックス】
治す医療から患者の生活を支える医療に
本年8月に、日本心臓財団とアステラス・アムジェン・バイオファーマ共催に
よる「ハートトーク2019」が開催され、その中で、榊原記念病院院長の磯部光
章先生が、脳卒中・循環器病対策基本法が成立した背景と、今後の医療につい
てお話しされました。
ここでは、磯部先生のお話の中から、これからの循環器病医療について、ご
紹介します。
少子・高齢化が進んだわが国では、循環器疾患の患者やその環境が大きく変
化しており、それに合わせて診療スタイルも変化しています。患者の年齢や病
気の進行ステージ、合併症があるかなどを考慮して、治療目標を個人ごとにき
め細かく設定することが重要になります。
心臓の働きが弱ってくる慢性心不全は、昔は歳も若く、合併症もあまりあり
ませんでした。現在は患者の多くが高齢者であり、心臓病だけではなく、高血
圧や糖尿病、腎臓病などいろいろな種類の合併症を持つ例が増えています。
治療の目標も「社会復帰」や「寿命を延ばす」だったものが「健康寿命を延
ばす」や「QOL(生活の質)の改善」へと大きく様変わりしています。
こうした背景から、治療の内容のすべてを医師が決めていた時代は終わり、
患者や家族の希望を聞いて、それらを尊重してした治療を行うようになりまし
た。高齢者に特有の合併症があることに加えて、患者や家族の要望は多様化し
ており、昔は医師・看護師を中心に回っていた医療が、理学療法士や栄養士な
どを動員した多職種・チーム医療へと変貌しています。
ですから、これからの循環器病医療には、従来の"治す医療"だけではなく、
"患者の生活を支える"という視点が欠かせないものになります。
とりわけ高齢者では筋力などの基礎体力の低下が大きな問題になります。体
力が低下した患者が循環器病を患った場合に長生きすることが難しくなるため、
これまでは生活習慣病予防対策を行っていれば良かったのですが、これからは
筋力を低下させない予防と治療が大切なものになります。
そのためには医療と介護が地域単位で連携して、その地域力で患者を支える
ことが大切になるのです。
磯部先生のご講演内容は、こちらに掲載されています。
https://www.jhf.or.jp/topics/2019/007970/
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【お知らせ】
まごまごするより、まず検診。(ACジャパン&日本心臓財団)
今月よりテレビ、ラジオ、新聞広告を通じて、日本心臓財団の新しいACジ
ャパンの支援キャンペーンが放送されています。
岸部一徳さん演じるおじいさんが孫と遊んでいるうちに・・・
高齢者の心不全を予防するため、とくに治療効果の高い弁膜症の早期発見と
適切なタイミングでの治療を啓発しています。
ACジャパンのキャンペーンの動画ページ(リンク)
https://www.ad-c.or.jp/campaign/support/support_03.html
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【ドクターのつぶやき】
豊富な医療情報の功罪
最近はメディアを通じての医療情報の報道が増え、そのこと自体は健康への
関心を高め、病気の理解が進み予防法や食事の注意が守られ早期の受診にもつ
ながる。
一方で、病気によって症状や経過・治療法は一律ではないので、場合により
治療法や効果なども報道とは多少異なってくる。さらに、薬には常に副作用が
あることから、報道で副作用が伝えられると、勝手に服薬を中止・処方を拒否
されることも経験する。さらに、国内外で発表される最近の大規模研究では、
合併疾患などの状態によって治療目標や薬の使い方などにも注意が必要になる。
このように個々の患者さんの状態による治療法の違いを目の前の患者さんか
ら納得を得るには限られた診療時間では容易でない。
症例1:男性患者Aさん。健康診断で高脂血症(総コレステロール255mg/dl、
LDLコレステロール205mg/dl)を指摘された。食事で卵・バター・チーズなどが
大好きということで、これら動物性脂肪食の摂取を制限すること、定期的な運
動を勧めて、外来で経過を見たところ、3-6か月でこれら脂質の値はほぼ正常値
となった。
翌年再び健康診断で高脂血症を指摘され受診してきた。聞いてみると雑誌に
「"コレステロールは体内で80%が作られ、食事から補給されるのは20%であ
る。コレステロールは血管などを強くし、体の免疫などに必要である"と書か
れていたので、健康にとって必要と解釈して以前のように好きな卵をたくさん
食べています」とのことである。
そこでコレステロールは体に必要であるが、高い値では動脈硬化を促進して
将来心臓病や脳血管障害を引き起こすことを説明し、食事療法を続ける必要性
を納得してもらった。
症例2:女性患者Bさん。近医から高脂血症(LDLコレステロール180-210mg/
dl)で紹介された。二次性高脂血症は否定されたので、食事の注意と定期的な
運動を週3回以上行うよう指示して経過を観察した。
ところが3か月後の検査でもコレステロール値は変わらず、食事や運動の注
意も守っているとのことでスタチンを処方した。薬を服用後3・6・9カ月と順調
にコレステロール値は正常化したが1年後の検査ではコレステロール値が治療前
のレベルに戻っていた。
聞いてみると「前回の血液検査後、友達と旅行に行って2日歩いたら両足の
筋肉が痛くなった。以前にテレビでコレステロールの薬で筋肉が融けて痛みが
出ると言っていたのを思い出し、薬の情報を見ると筋肉の融解が副作用として
書いてあるので中止した」とのことである。
そこで、足の痛みは急に2日歩いたための筋肉痛で、薬による筋肉の融解は
頻度も少なく徐々に発現し、血液でもその兆候が認められ、その時点で薬を止
めればすぐに回復します、と説得してやっと薬の服用を了解してもらった。
症例3;男性患者Cさん。以前に心筋梗塞の既往があり、その2次予防で
LDLコレステロール値を100mg/dl以下に維持する必要を了解し、スタチンなどを
投与していた。
ところが次の受診時に薬を服用していないとのことなので、その理由を聞く
と「前回の検査でLDLコレステロールが65mg/dlで正常下限の70mg/dlより低かっ
た。コレステロールは体に必要と雑誌に書いてあったので止めた」とのことで
ある。
そこで心筋梗塞の再発を防ぐには70mg/dl以下であっても再発予防に有効であ
るとの最近の研究成績を紹介して、しぶしぶ薬の服用を納得してもらった。こ
のようにコレステロールの値を下げるだけのことでも異なる意見や反応が出る
のである。(M.H)
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