一般向けメールマガジン 第163号
HEART WEB NEWS No.163
=======================================【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第163号】2019年3月4日発行(月刊)
=======================================【目次】
お知らせ
トピックス:3月9日は「脈の日(Check Pulse Day)」
お知らせ:心臓の「叫び」に気づいてください。
イベント情報
ドクターのつぶやき:臨床研究法拡大解釈への危惧
ご寄附のお願い
=======================================【トピックス】
3月9日は「脈の日(Check Pulse Day)」
日本脳卒中協会は、3月9日が「3・9(みゃく)」と読めることから、「脈の日」と定めて、国民に脈をチェックすることを呼びかけています。そして、日本脳卒中協会と日本不整脈心電学会では、脈の日から一週間(3月9日~15日)を「心房細動週間」として、心房細動による脳梗塞を起こさないよう、予防啓発を行っています。
心臓には左右それぞれ心房と心室の4つの部屋があります。不整脈の一つである心房細動は、心臓の上の部屋になる心房が、部分部分がまったくばらばらに細かく収縮する状態、こきざみに震えている状態です。心房筋がばらばらに動くので、そこから血液が流れていく心室の動きにも規則的なリズムがなくなり、脈拍は大きさも間隔も不規則なものとなります。
心房細動があっても、そのために生命が脅かされることはありませんが、心房内の血液の流れが悪くなるので、心房内に血栓ができやすくなり、それが脳に飛んで脳梗塞を起こすことがあります。
左心房の一部に左心耳と呼ばれる部分があります。ここは丁度顔についている耳のように、心房の一部がふくらんでいる箇所で、もともと血液の流れがあまりない部分なのですが、心房細動になると心房全体の収縮性が低下するため、左心耳内は血流がほとんどなくなり、血液がうっ滞して血栓(血のかたまり)ができてしまうのです。
この血栓が何かの拍子に剥がれると、血液の流れに乗って左心房→左心室→大動脈→頸動脈→大脳動脈と進み、脳動脈の途中で詰まって脳梗塞を起こしてしまいます。
心房細動の原因の一つには加齢があり、超高齢社会の日本では患者数が増加しています。現在、検診で診断される患者数だけでも約80万人と推計されていますが、実際には100万人を超すものと思われます。そしてこれからますます増加していくことになります。
この機会に、ご自分の脈をチェックし、脈がおかしいと感じたら、病院で心電図検査を受けてみましょう。
そして、心房細動を惹起するようなストレスや暴飲暴食、寝不足などの生活習慣を改善しましょう。
また、心房細動と診断されたら、脳梗塞を起こさないよう、きちんと治療しましょう。
心房細動週間ウェブサイト
http://www.shinbousaidou-week.org/
=======================================【お知らせ】
心臓の「叫び」に気づいてください。(ACジャパン&日本心臓財団)
この7月から1年間、テレビ、ラジオ、新聞広告を通じて、日本心臓財団の新しいACジャパンの支援キャンペーンが放送されます。
今回も、ユニークな内容で、高齢者の心不全を予防するため、とくに治療効果の高い弁膜症の早期発見と適切なタイミングでの治療を啓発します。
ACジャパンのキャンペーンの動画ページ(リンク)
https://www.ad-c.or.jp/campaign/support/support_03.html
=======================================【イベント情報】
□■ファミリー向けイベント
「家族みんなで医学体験!"命をすくう"をやってみよう、知ってみよう」
日 時:2019年3月30日・31日 9時~17時
場 所:クイーンズスクエア横浜 クイーンズサークル
(屋内 みなとみらい駅直結)
内 容
1)シミュレータを用いた心臓カテーテル治療の体験コーナー
2)アニメとゲームで学ぶAED救命体験コーナー
3)パネル展示&クイズコーナー
参加費:無料、どなたでも参加自由です。
1)2)はお子様向け体験コーナーで、当日、整理券を配布します
=======================================【ドクターのつぶやき】
臨床研究法拡大解釈への危惧
薬剤の有効性を明らかにするためには、対象となる患者の背景を揃えて薬を投与し、経過を追わなければならない。できるだけリスクを抑えて実施されるが、どの薬を使うかは研究者に任される。これを介入研究といい、有効性や安全性を評価する方法として高い科学的検出力をもつ。
一方、医療上の理由ですでに薬が投与されている患者の診療データを分析して有効性や安全性を議論する研究を観察研究と呼ぶ。この方法は患者集団の背景が揃っていないので、有効性や安全性を検出する力は弱く、病気の原因や薬の副作用を厳密に特定することはできない。しかし一つの可能性であっても、さまざまな議論を起すことができるので、医学的にも社会的にも重要な役割を担っている。
数年前にわが国の介入研究で不正があったため臨床研究法が制定され、昨年春から施行された。これにより有効性や安全性を明らかにする目的で治療薬を投与する研究、すなわち介入研究は法的な制約を受けるようになった。
介入研究を行うには、膨大な資料を用意し、さらに企業の資金援助を受けると認定委員会の承認を得なければならない。それでも研究の公正性を確保する上で重要なステップといえる。
ところが厚生労働省は、医療上の理由で薬剤をすでに投与されている患者の診療データの分析、すなわち観察研究であっても、追加の来院や検査によって医薬品の安全性や有効性を評価すれば、法の規定する介入研究に含めることを、Q&Aおよび事例集により通知した。臨床研究法を拡大解釈して、観察研究であっても通常の医療を超えれば介入研究と見做すというのである。
半世紀前、わが国でスモン病という整腸剤キノホルムによる薬害事件が発生した。キノホルム製剤により視神経や脊髄の障害が起こり、数千人に重篤な神経障害が現われた。当初は感染症とも言われたが、患者の舌や尿が緑色になることに気づいた医師がこれを分析したところキノホルムが検出され、整腸剤の副作用であることが明らかになった。
このように臨床医が、定説を批判的に考えて診療を行うことは珍しくない。医療現場で薬剤を使用しているときに思わぬ副作用が起こっていないか、診断されていてもこれまで知られていない病気ではないかなどの心構えは、あらゆる医師に求められる。薬剤の未知の副作用を疑えば、同じ薬剤を使っている患者に追加の来院や検査をお願いすることになる。このレベルの検討は診療と表裏一体であり、罰則を伴う臨床研究法で規制する話ではない。
もし第二のスモン病が今の日本で発生したとする。尿や舌苔の分析を企業と協力して調査する場合は特定臨床研究と位置づけられ、認定委員会の許可がなければ進めることはできない。そもそも臨床研究法が対象とする研究は、研究目的で医薬品を使用する場合であるから、医療上の理由で医薬品を使っている場合は対象外のはずである。この点について、法律の定義と行政の解釈の間に齟齬をきたしている。
国民は自分に投与されている薬の有効性や副作用をできるだけ早期に知る権利がある。副作用については一刻を争うし、有効性の根拠を理解して薬を使うのも当然である。その意味で医療上の観察研究を、法律と繁雑な手続で制約することは、国民の「知る権利」の侵害にもなりかねない。(R.N.)
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